守護神が、魂を込めて流れを引き寄せた。楽天松井裕樹投手(23)がソフトバンク戦で今季4度目のイニングまたぎで2回を無失点。9回2死から4者連続三振を奪うなど、1人の走者も許さない圧倒的な投球で今季6度目のサヨナラ勝ちを呼び込んだ。今月3度目となる5時間超のロングゲームに競り勝って同一カード3連敗を阻止し、チームは3位をキープした。

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松井は平然と言った。「今日の中継ぎの人数を考えたら、2イニングいくつもりだったので」。高梨、青山、小野が2連投しており、辛島も前日56球を投げている。延長12回までもつれる可能性を考慮すれば、誰かがイニングをまたぐことが理想だった。ブルペン担当の森山投手コーチは「(登板前にイニングまたぎの可能性を)伝えようとしたら、本人は既にその心構えができていた」と頼もしさに目を細めた。

覚悟を決め、明確な狙いを定めて9回のマウンドへ上がった。「1イニング目の球数をどれだけ減らせるか」。牧原を3球で遊ゴロ、3安打2打点と当たっていた甲斐は1球で左飛。全てストライクをそろえ、早め早めの勝負にこだわった。福田への初球スライダーが、この日初めてのボール。さらにスライダーを3球続けて追い込み、最後は148キロの直球で空を切らせた。楽天戦で打率3割6分8厘をマークしている難敵に粘ることを許さなかった。

わずか9球で終えると、圧巻は2イニング目の延長10回。上林はボールゾーンに消えるスライダーを振らせ、内川には150キロの直球で3球勝負。対左投手の打率が4割近い川島もスライダーでバットにかすらせず、前のイニングから4者連続三振に仕留めた。「結果的に、そう(連続三振でチームに勢いをつける投球に)なって良かった」とうなずいた。

2年ぶりの30セーブに王手をかけてから、4試合連続となるセーブのつかない場面での登板。「チームが勝ったので良かったです」。守護神がフォア・ザ・チームを体現する。【亀山泰宏】