<楽天6-0ソフトバンク>◇5日◇楽天生命パーク

悔いはない。楽天涌井秀章投手(34)が自身初のノーヒットノーランを残り2アウトで逃したが、被安打1で今季初完封。08年北京オリンピック(五輪)をともに戦ったソフトバンク和田との投げ合いを制し、自身初の開幕6連勝を決めた。球場の雰囲気にも流されず、打たせてとる投球で今季最多132球を投げぬいた。首位攻防6連戦を2つ先勝したチームは首位ソフトバンクに並んだ。

   ◇   ◇   ◇

涌井には、ひそかな願いがある。「“こやシン”の名前を広めたいんだよね。ぜひ記事にしてほしい」。こや…シン? 「小山コーチからシンカーを教えてもらったから。“こや”はひらがな。“シン”はカタカナで」と表記にもこだわる。この1球が打者との駆け引きにおいて、絶妙なスパイスとなる。

小山投手コーチの持ち球ツーシームの握りを参考に、春季キャンプから習得に取り組んだ。130キロ中盤で右打者の内角へ微妙に曲がり落ちる。「あるとないとでは、たぶん違う。ストレートとそこまで変わらないスピードで打者に食い込む。それに狙いを絞ることはなかなかできないと思う。だから難しい。ストライクゾーンで動いていくから」。150キロ付近の直球をコーナーに集め、スッとゾーン内から沈む“こやシン”で打ち取る。この日も狙い通りの効果を発揮。2球が凡打、ファウルが4球、見逃しストライクが2つ。「大体思ったような変化はしてくれる。小山さんからしたら『まだまだだな』という感じだろうけど」。打者には厄介極まりない。

自身を「先発完投人間」と称す。ただ、球数制限がうたわれる昨今の野球界。いかに少ない球数で投げきれるか。走り込み、投げ込みという地道な努力を土台に“こやシン”が「進化形・涌井」への道しるべになる。【桑原幹久】