勝負の3年目で「頂」だ! 連覇巨人の前に苦杯をなめた矢野阪神。3位、2位と就任1年目からAクラスを続けた矢野燿大監督(52)にとってはまさに「勝負の年」だ。その心境は-。コラム「虎になれ!」でおなじみ高原寿夫編集委員の核心インタビューを新年からお届けします。【取材・構成=松井周治、桝井聡、編集委員・高原寿夫】

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高原 20年は「日本一になると決まっている」と「予祝」の考えで戦った結果が2位。言葉が現実にならなかったことはどう受け止めていますか?

矢野監督 あんなこと言って優勝できなくて「恥かいたな」とか「お前、たいそうなこと言うてたけどできんかったやん」という声があるのは、重々、承知しています。でも「優勝できるように頑張ります」って言っている自分と「優勝しますよ、決めてますから」と言う自分のどちらを選択するか。僕はこっちを選択したいんです。

高原 21年も「勝つと決まっている」の姿勢で向かっていく?

矢野監督 もちろん。ある意味、僕が言うのが足りんかったんかなって思ってる。もっと言わなあかんかったんかなと。もちろん葛藤はあるんですよ。言うたらたたく人もいるし。口ばっかりやと。それは承知している。そこに対する怖さというか、それはありますけどそっちを選択してやりたい。それも挑戦です。

高原 1年目から3位、2位ときて勝負の3年目。新年から恐縮ですが優勝はもちろん、監督自身の行く末もテーマだと見ています。プロ野球の監督は一生できません。星野仙一さんは勝った年に自ら引いた。

矢野監督 勝って辞めるのが一番いいなと思ってます。それは。現状ですよ、現状、長く監督やりたいとは全然思っていなくて。監督にとどまりたいという思いが、僕の中で、むっちゃ強いかと言われればそうでもないんです。

高原 プロ野球の監督を長くやりたいっていう人はあまりいないものですか?

矢野監督 そんな人ばっかりじゃないですか(笑い)。

高原 それはそうか(笑い)。気持ちの中で例えば勝たずにやめれるか! という感じはないですか。

矢野監督 それは分からないですよ。終わってみて「クソッ」と思っててもやめろって言われてやめてることもあり得ると思いますし。最終的に僕が判断することではないですから。僕は精いっぱい今の仕事をやり切るだけ。あとは球団の判断。それはノーって言えるものではないので。それは、今はあまり何も考えていません。

高原 とにかくファンの立場からすれば日本一になってほしい。

矢野監督 もちろんです。そこしかないので。リーグ優勝だけでいいなんて全然思っていないですし、もちろん日本一になる。契約は今年までなんでね。あとは球団が判断することだろうし、そこまで自分がどうやり切るか。これ(スローガン)をどうするか。

高原 新たなスローガン「挑・超・頂」ですね。

矢野監督 僕はね、いい伝統を残したいんですよ。タイガースに。何かを残せるとしたらそこなんですよ。自分らがやってきた証しというか、そういうものを。自主性も含めてね。プロだからこそ小学校、中学校、高校とやらされてきた野球のまんまやるんじゃなくて。1人1人プロとして。自分で自覚してね。毎日、ゴールデングラブ取るぞってグラウンドに出てくるのか、今日どんな練習するんですか?って出てくるのか。どっちやって。ゴールデングラブ取るぞってやった方が楽しいし、自主性が生まれると思う。

高原 監督のポリシーのこもったスローガン。

矢野監督 トレーナーが出してくれたアイデアなんですよ。監督と球団が決めるっていうのは本当のスローガンじゃない。トレーナーも戦力、背広組のガミ(二神広報)も戦力なんです。僕らだけではチームを強くできない。みんなで行くぞ!っていうのをチームに残したいんです。(つづく)

 

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