プロを目指す若者たちの武者修行が、今オフも行われる。独立リーグのBC・茨城、色川冬馬GM(32)が発起人のトライアウトプログラム「アジアンブリーズ」が、23年の参加選手を募集している。

2019年に始まった「アジアンブリーズ」は、独立リーグ出身者などが集まってトラベリングチームを結成し、米国・アリゾナ州を拠点にMLB傘下の球団や韓国、メキシコのプロ球団と試合を行うプロジェクト。過去には元楽天の横山貴明氏(31)が戦力外となった後に参加したこともある。現地でスカウトの目に留まればマイナー契約を交わすこともでき、これまで21人が、メキシコやオランダを含め、各国でプロ契約にこぎつけた。23年の日程は2月27日から3月19日までの21日間で、14試合程度を予定している。

普段から積極的に講演を行うなど、野球界の発展に尽力する色川氏は「日本では野球部を辞めたら学校からはじき出されてしまう。生きる上での選択肢を1つでも知ってほしい。日本という小さな世界だけではなく、世界の中の現在地を知ってほしい」と、この活動への思いを語った。

今オフにはうれしい知らせも届いた。渡辺明貴投手(22)がDeNAに育成4位で入団。育成契約とはいえ、同プロジェクトから初めてNPBのドラフト会議で指名された選手となった。渡辺は小学1年で野球を始め、静岡県内の高校に進学。しかし野球部の環境になじめず半年で退部し、高校も中退した。その後、滋賀や韓国の独立リーグでプレーし、「アジアンブリーズ」に参加したのは20年2月。「自分の現在地がわかった貴重な経験だった」と当時を振り返る。メジャー傘下のマイナー球団や韓国のプロ球団と対戦。4試合を投げ計4イニングで5三振を奪ったが、防御率は9・00という結果だった。「直球には自信があったし、最速の150キロを出せたけど、打たれてしまった。このままじゃ終われないと思った」と、闘志に火が付いた。

現地では技術だけではなく、マウンド上での気の持ち方など、精神的なことも学び、帰国後の日本での練習に生かした。「世界トップレベルと試合が出来る。さらに成長できるチャンスがある。世界は広がってやるしかない」と、夢をかなえるためのステップになった。

来年もここから夢の世界へ羽ばたく選手が誕生する。【星夏穂】

◆募集要項 12月16日までHP(https://asian-breeze.com/2023bosyu)で募集している。