ロッテ東條大樹投手(31)が13日、ZOZOマリンで契約更改を行った。3300万円増の来季年俸5500万円(金額はいずれも推定)でサインした。

プロ7年目の今季、59試合に登板して4勝4敗30ホールド、防御率2・08と活躍し、監督推薦でオールスターにも選ばれた(コロナ療養で出場辞退)。5位に低迷する中、打の高部と並びチーム内ではMVP級の働き。「とても評価していただいたんで、すごく感謝しています」と話した。

サイドスローからの大きなスライダーが特徴的な右腕は、本当はサイドスローが嫌だったという。初めて横から投げたのは、神奈川・湘南クラブに所属していた中学3年の時。この秋、日刊スポーツのインタビューで明かした。

「中3で監督にサイドにしないかって言われて。あんまり格好良くないかなって、当時はすごく嫌だったので(笑い)。中学の最後の試合が終わって、高校入学まで、また普通に上投げで投げていました」

桐光学園(神奈川)に入学し、運命が変わる。入学直後の紅白戦でのこと。

「けっこう打たれて、野呂監督に『やっぱりサイドの方がいいんじゃないか』って言われてからサイドにしたのは覚えています」 

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東條や楽天松井裕樹投手(27)らを育て、現在も桐光学園の指揮をとる野呂雅之監督(61)の記憶はもっと鮮明だ。

「2~3日、よく考えたら? って東條に言ったと思います。私のノートにそう書いたのが残ってます。毎日のようには書かないけれど、彼のサイドスロー転向は部全体のキーポイントの1つですし」

入学直後、野呂監督はまだオーバースローで投げていた東條が、投球動作で左足を上げた時に右ひざが曲がってしまうクセが気になっていた。

引き合いに出したのは、その数年前に甲子園をわかせた斎藤佑樹氏だ。野呂監督の早実(東京)時代の同級生、和泉実氏が母校の監督をして「ハンカチ王子」の3年間をつぶさに見てきた。斎藤氏も同じタイミングで右ひざが折れた。

「和泉に『折れてて平気なの?』と聞いたら『あいつ、折ってから球来るようになったんだよね』って言われて」

そんなこともあり、ヒザが折れる投球動作を一概には否定しなかった。「でも、なんか気になっちゃって。人一倍バネがある東條の勢いが、そのヒザの折れで力が半減しないかと。カンガルーみたいな走り方をするほどのバネがあるのに」。サイドスローで化ける可能性を感じた。

「横から投げたら、打者としては威圧感あるよと。今でもなかなか、あの(体勢的に)苦しい出どころで投げてる投手ってプロでも少ない。そっちをとった方がいいんじゃないって思うけど? みたいな感じで伝えました」

野呂監督が今でも覚えている1球がある。横手投げが板につき始めた、1年生の7月。夏の神奈川大会前、最後の練習試合。桜美林(東京)相手で、僅差の試合終盤で2死満塁、フルカウント。東條は3年生捕手の外角サインに首を振り、内角に投げ込んで抑えたという。「その時期の3年生相手に、ぶつけちゃうかもしれない場面で投げきって。これなら使えると」。1年夏からベンチ入りし、登板こそなかったものの甲子園の土を踏んだ。

野球部員たちと毎日のように向き合いながら、教え子のこともやはり気になる。昨季はわずか5試合の登板。「東條に『今年ダメなら終わりじゃないのか?』って言ったら『そうなんですよ、でも今年、大丈夫ですよ』って返してきて。そうしたら本当に、今年良かったですね。良くなりましたよね。左打者も苦にならなくなってきたし」と頼もしさを口にした。

フル回転した東條も30歳を超えた。働き盛りだ。右足首の手術を経て、来季へ向かう。「タイプ的にはオリックスの比嘉君みたいですよね。このまま流れに乗ってくれそうな気もします。くよくよするタイプでもないし」。来年こそオールスターで東條→松井の教え子継投を-。恩師は多摩のふところから願っている。【金子真仁】

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