左肘の手術から復活した日本ハム宮西尚生投手(37)が、またもや球史に名を刻んだ。西武戦の延長10回に登板し、1イニングを無失点。チームは12回に力尽き再び最下位に転落したが、宮西は初登板から823試合連続リリーフ登板となり、99~20年の五十嵐亮太(ヤクルト、ソフトバンク)が記録したプロ野球記録に並んだ。あと12ホールドで節目の400ホールドにも到達する。

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決め球は、いずれも宝刀スライダーだった。日本ハムが誇る鉄腕が、マウンドでほえた。同点の延長10回、7番手で登板した宮西が1イニングを2安打無失点。1死一、二塁から、2者連続三振に仕留めた。今季開幕から15試合に救援し、失ったのは、たったの1点。傷だらけの鉄腕が、引退目前の崖っぷちからはい上がった証しだ。

プロ最少24試合の登板に終わった昨季、3度目の手術を受けた。選手生命を懸けた決断だった。823試合を耐え抜いた左肘関節の軟骨は、既にない。骨同士が直接ぶつかり、たまったカスが炎症を引き起こして「体の誤作動」が起きていた。炎症で生じる水がたまり続け「肘がパンパンになって曲げ伸ばしが出来ない」状態に。術後の現在は水がたまっても正常の範囲内だが「根本的な原因が、なくなったわけではない」。何年先に限界が来るかは、分からない。「やることは全部やった。だから、いつも最後のチャンスだと思って投げている」。覚悟を決めて、毎試合マウンドに上がる。

6月で38歳。不惑間近になり、体のケアには人一倍気を使う。治療はもちろん、休日も「血流を良くするために、なるべく歩く。体が固まらないように」。日々の積み重ねがあって、若い投手と同じ土俵で戦える。引退が頭をよぎった昨年から一転、今季はオープン戦6試合で無失点。開幕戦前日、新庄監督から「よく戻ってきてくれた」と、かけられた言葉が、うれしかった。昨季まで同僚で、ここまで3打数無安打に封じられているソフトバンク近藤は「球のキレ、要所での制球を間違えない。ミヤさんとの対戦は楽しい」と鉄腕の復活を歓迎した。

勝ちパターンの一角に戻り、経験が浅いブルペン陣を精神的にも支える左腕。目指す節目の400ホールドまで、あと12個。伝説は、まだまだ続く。【中島宙恵】

▽日本ハム宮西 特に数字は意識していなかった。それより今日は勝ちたかったな。強気に攻めるタイミングとコースのメリハリをつけて投げられた。400ホールドは本当に取りたいと、今までで一番強く思っている。去年の時点で、もう絶対に届かないと思っていたから。そのチャンスが目の前にある。ガムシャラに取りに行きたいという欲を、初めて出しながら投げている。

▼日本ハム宮西が7番手で登板。初登板から通算823試合連続リリーフ登板となり、五十嵐亮太の最長記録に並んだ。初登板からの条件を外すと連続試合リリーフ登板の最長は岩瀬仁紀が01~18年にマークした879試合で、823試合は2位タイ。通算登板数は歴代7位の五十嵐に並び、先発経験がない投手では五十嵐とともに最多となる。

<日本ハム宮西の主な実績>

◆50試合以上登板 プロ1年目の08年から21年まで14年継続した。15年連続の岩瀬(中日)に次ぐ歴代2位。

◆ホールド(H)&ホールドポイント(HP) Hは通算388、HPは通算424でプロ野球最多を更新中。

◆連続試合 12試合連続ホールド(13年8月23日~9月30日)、13試合連続ホールドポイント(18年8月7日~9月2日)は、ともにパ・リーグ5位タイ。

◆タイトル 最優秀中継ぎ投手を3度(16、18、19)年に獲得。

※通算記録は16日現在