「2023JERA クライマックスシリーズ セ」のファイナルステージが18日、リーグ優勝チーム阪神の本拠地甲子園で開幕する。

ファーストステージ突破で勢いに乗る新井カープを相手に、王者タイガースはどう戦うべきか。虎OBで日刊スポーツ評論家の鳥谷敬氏(42)は「接戦で代走羽月を登場させない」「好調野間の勢い封じ」の2点を日本シリーズ進出へのポイントにあげた。【聞き手=佐井陽介】

  ◇  ◇  ◇

阪神は特に初戦、接戦のまま終盤を迎えたくないですね。広島は疲労が取れた中継ぎ陣に安定感が戻りましたし、何より足のスペシャリストの存在が怖い。阪神側も盤石のリリーフ陣が準備しているとはいえ、登板間隔が空いていて多少の不安は拭えません。ある程度のリードを保った状態で終盤を迎えたいというのが本音じゃないでしょうか。

カープは菊池選手、西川選手、野間選手ら負傷組がスタメンに戻ってきたことで、俊足勢を勝負どころまでベンチで待機させられる状態になりました。阪神が終盤に熊谷選手や植田選手ら代走の足で相手に重圧をかけてきたのと同じ怖さが、今の広島にはあるわけです。羽月選手、矢野選手、上本選手…。中でもレギュラーシーズン50試合出場で14盗塁を決めた羽月選手の足は脅威です。阪神目線で言えば、足で流れを変えられる選手をたとえば1点差で走者に置かないように注意しなければなりません。

羽月選手はファーストステージ初戦の1点を追う8回に代走登場し、三盗から同点のホームを踏んでいます。二盗ならまだしも三盗を決められてしまうと、試合展開は大きく動いてしまいます。ただでさえカープはスキを突いたら一気に勢いに乗るチーム。DeNAと同じ轍(てつ)を踏まないように、阪神は相当に気を配る必要があります。

タイガースはとにかくこれ以上、カープを勢いに乗せたくありません。相手の出ばなをくじくという意味では、初戦に先発する村上投手の投球も重要です。05年の日本シリーズではロッテ今江選手が1戦目から確変状態に入り、流れがロッテ側に傾きました。今年の広島ではファーストステージ2試合で計5安打を放った野間選手に同じような気配を感じます。つなぎの役割を担う野間選手をしっかり切る作業もポイントの1つ。そういった観点から見ても、初戦の村上投手の先発は理にかなった起用だと感じます。

おそらく村上投手は今、阪神でもっとも大崩れする確率が低い先発投手です。コントロールが良くて安定感があり、突然乱調に陥って相手打線を乗せてしまう危険性も低い。そんな投手を1番手に選んだ決断からも、岡田監督の狙いを想像できます。初戦は村上投手が序盤から丁寧に試合を作り、久々に一線級と戦う打線の目覚め、スイッチが入る瞬間を待つ形になるのではないでしょうか。

個人的には12球団屈指の投手力を誇る阪神の優位は変わらないと考えます。もちろん、新井監督のもとでファーストステージを突破した広島の勢いは侮れません。シーズン終盤に主力選手を休ませた我慢も功を奏して、選手の状態は上がっている印象です。一方で、ファーストステージで先発した床田投手と森下投手の今季勝ち頭2人が、ファイナルステージでは3戦目以降まで投げない可能性が高いのもまた事実です。

投手を中心に普段通りスキのない「守りの野球」を貫ければ、阪神が勝ち上がる可能性は高いと見ます。(日刊スポーツ評論家)