西武中村剛也内野手(40)が3日、完全充電中であることを明かした。

10月1日に出場選手登録を抹消されて約1カ月、秋季練習にも秋季キャンプにも現れていなかった。

「姿、見せないからね」

いたずらっぽく笑う。別に隠れてはいない。この日は都内の球場にいた。中学生になる長男の野球観戦。「午前中からずーっとここに座ってて。ずーっと。日陰に。ほんと暑いよね、もう11月なのに」。関東大会の決勝戦、日が傾く中、長男は125キロを投げ込んで胴上げ投手になった。

「うまくなったのかな? 似てるっちゃ似てますね、体形。長男も次男も」

小学生の次男は「ライオンズジュニア」に選出され、この日は練習試合で2安打。一塁を守り、再三のショートバウンド捕球も見事だった。「構え、ちょっとデスパイネっぽかったでしょ? 構えあんな感じなのに、けっこう打つんですよね」。うれしそうだ。

長男も次男も野球に励む秋、父は。

「何もしてない」

子どもとキャッチボールをするとかは。

「子どもともしてない」

子どものチームの練習は手伝ったりする。たまにノックを打ったりも。

プロ22年目を終えた。本塁打数は現役最多の471本。今季は88試合で322打席に立ち、リーグ7位の17本塁打。チーム事情から4番にも多く座った。

「いやぁ、もうちょっと打てたかなと思いますね。いろいろもったいないのもあって。ケガとか体調崩したとか。そういうことあると、なかなかいい成績って残せないだろうし」

3、4月度の月間MVPに選ばれるなど快調のスタートではあった。

「打てるかどうかは別として、30発打ちたいのは思ってて。でもケガして、本数はあまり気にしなくなって、最後に17本まで行ったから20本までは打ちたいなと思ってましたけど」

そんな1年を「まぁ結局、ホームラン打ちたかったですね、もうちょっと」と振り返る。

40歳になり、契約も最終年だった今季。球団は「もちろん現役でしょう」と契約更新の方針を早くから打ち出していたが、中村本人は「別に、何も考えたことない」といつもの泰然自若ぶり。現役続行とか騒ぐものでもない-。行間からそんな強いプライドが見え隠れするようだった。

22年前、大阪桐蔭で通算83本塁打を放って名を上げた。同じ年、同じ大阪のPL学園の主砲として青春のしのぎを削っていた今江敏晃氏(40)が今回、楽天の新監督に就任した。

「連絡しましたよ。おめでとうって。なんか不思議っすよね。コーチの時は別になんとも思わなかったけど。今江って呼べないっすね。監督ぅ!!っすよね。別のチームなのに」

そんな光景が目に浮かぶようだ。本人の口から今まで“これから”のことをひと言も発しなかった。これが事実上の現役続行宣言になる。中村剛也はまだまだ第一線を張る。

都内の木々も赤や黄色に染まってきた。冬を越え、迎える2024年はどんな1年に。

「健康第一で。ケガせず」

あと29本ですね。

「29本…ですね」

主語はいらない。狙える数字だから分かっている。充電を終えれば、偉大な500本塁打へ歩き出す。

「そうっすね、ぼちぼち。そろそろウオーキングくらいから始めようかな。夜な夜な」

ひっそりと歩き出す。【金子真仁】

◆今季の中村 88試合に出場し、打率2割5分8厘、17本塁打、40打点。うち46試合でスタメン4番。本塁打数はリーグ7位だった。通算2000試合も達成し、史上初の2000三振にも到達。「悔しいけど悔しくないです」とプライドを見せた。

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