現役引退から7年たってなお、教え子は幸せなニュースを恩師のもとに届けてくれた。

「2024年野球殿堂入り通知式」が18日に都内の野球殿堂博物館で行われ、プレーヤー表彰で元広島エースの黒田博樹球団アドバイザー(48)が選出された。上宮(大阪)時代の監督、コーチだった近大・田中秀昌前監督(66)は「おめでとうございます。名誉なこと。快挙やわ」と声を弾ませた。

高校時代は長身から投げ下ろす球に威力はあっても、試合では重圧に押されて高い能力を生かせず。強豪のエースの座は遠かった。素材はプロ候補でも、道のりは長く険しいと感じていた。それだけに専大から広島入りし、メジャーのエースにまで上り詰めた野球人生は恩師にとっても驚きの連続だ。

活躍を支えたのは「初心を忘れない謙虚な姿勢。そしてお母さんのしつけが彼の義理堅さ、人としての素晴らしさを育んだと思います」。愛情と厳しさで息子を育て、02年6月に亡くなった母靖子さんを恩師は思い起こした。

田中前監督にとっても、節目の姿を見守りたい教え子だった。東大阪大柏原監督時代の11年、激務の合間を縫って渡米。ドジャース黒田の勇姿を見た。興奮し、感激したメジャー観戦から5年後の秋、心震える光景にまた巡り合った。

黒田氏が引退を発表した16年秋。「目に焼きつけたい」と日帰りでマツダスタジアムへ。「ファンの皆さんが黒田のユニホームを着て応援してくださっていた」。背番号15が浮かぶ真っ赤なスタンドに、震えが止まらなかった。

交流は今も続く。今年の正月、黒田さんからメールが届いた。新年のあいさつに続いて「ありがたいことに今年もカープのお手伝いをさせてもらうことになりました」から始まる文面は「また食事よろしくお願いします」と締めくくられていた。コロナ禍で途絶えていた会食が、復活する。喜びの再会が、祝いの席になる。その日が楽しみでならない。【堀まどか】