阪神岩崎優投手(32)のキャッチボールを眺めていて気付いた。投げるペースが他の投手よりも遅い。1球ごとの間隔が長い。はた目には分からない「何か」を確かめるように。

例えば投げ始め。試合では決してやらないノーワインドアップから投げた。その後、他の投手よりゆっくり距離を伸ばすと、50メートルほどで足を止め、そこで長い時間をかけた。遠投はあまりしないという。その距離でときどき、大きな弧を描く「山なり」のボールをはさんだ。全力で投げた球はない。独特のキャッチボールに映った。

名投手で、キャッチボールをおざなりにしている人はいない、と言われる。岩崎もきっとそういう投手だと確信した。キャッチボールのこだわりを聞く際、「球児たちに伝わるように教えてほしい」とお願いした。

意識していることはシンプルだった。まずは、狙ったところに投げ続けること。漠然とではなく「ここ」と狙い定める。「狙ったところに投げることを毎回するのって結構、集中力がいる。そこをしっかり集中して、やる。プロでも毎回は狙い通りにいかないけど、確率を上げるように意識する。シュート回転すれば、何でシュートしたんだろうと考えて、次はシュートしないように調整します」

山なりを投げる意図にもつながった。手首がまっすぐに立っていないと、正しいバックスピンにならないし、制球も定まらない。修正方法の1つだった。岩崎はキャッチボールを終えたその足でブルペンに向かうと、初球から低めを狙ってびしびしと、直球、変化球を投げ込んだ。

「キャッチボールは肩慣らしではない。技術が上がるような意識で投げています。誰にでもできることを、おろそかにしている人がほとんどだと思います」という言葉に強い意思がこもっていた。【柏原誠】

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