侍ジャパンが3大会ぶりの世界一奪還を果たした。

栗山英樹監督(61)が悲願を達成した。侍ジャパンの監督就任は、21年11月。10シーズン務めた日本ハムの監督を辞めた後だ。オファーをもらったとき、思わず、こう問い返した。

「僕が選ぶ人だったら、僕は選びませんよ」

引き受けるべきか-。考えに考えた末、個人の感情を捨てた。求められた以上、引き受けるしかなかった。私を捨て、日本の野球のために。

侍たちの大将となった。好きな戦国武将は、大谷吉継。盟友の石田三成を助け、最期は関ケ原の戦いで散った。「戦国武将って、非情にならなきゃいけないところもあったと思う。それでも、そういう世界でも、やっぱり人のために尽くしきれる武将がいた」。

逸話がある。ある茶会の席。病を患っていた大谷吉継の顔からただれたうみが、茶の中に落ちた。だが、石田三成は平気な顔で茶を口にした。

「その人間関係。(逸話は)作られたものかもしれないけど、それぐらい大事にされる。多分、大谷吉継、それだけのことをしてきたから、三成にとって、どれだけ大事だったかということですよね」

体が悪くても、友のために尽くした大谷吉継。その思いに応えた石田三成。2人の関係から感じ入るものがあった。

「そういう生きざまって、あこがれる。監督って、自分を捨てることだと思うんでね。自分なんか足元にも及ばないですけど。その意志だけは、いつも思っている」

野球のために。ファンのために。未来のために。その思いで戦った末の世界一だった。

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