プロレスの月曜日

ジュリア 怒りを力に変え終わりなき戦いに挑む

<プロレスの女>

プロレス界の輝く女性たちを紹介するコーナー第10回はスターダムのジュリア(26)。昨年10月にアイスリボンから電撃移籍。“お騒がせ女”として、故木村花さんとの攻防や新ユニット「ドンナ・デル・モンド(DDM)」結成などで話題を振りまいてきた。7月26日後楽園大会ではシングル主要ベルトの1つ、ワンダー・オブ・スターダムを初戴冠。成長を続ける彼女に、今の思いを聞いた。

美貌と圧倒的な強さでスターダムに嵐を巻き起こすジュリア(撮影・横山健太)
美貌と圧倒的な強さでスターダムに嵐を巻き起こすジュリア(撮影・横山健太)

電撃移籍から約9カ月。ジュリアは「本当に、すべてが変わった」としみじみと語った。昨年10月14日、前所属団体アイスリボンとの交渉が終わらぬうちに、スターダムの後楽園大会に現れ、移籍を発表。その後、両団体の話し合いの末、正式に移籍が発表されたが、“お騒がせ女”として賛否両論を浴びた。その後、故木村花さんとの“ハーフ抗争”が勃発。同12月24日の初シングルで名勝負を繰り広げた。今は美女軍団「DDM」を率い、スターダム看板選手として確固たる地位を築きつつある。

ハーフで、元キャバクラ嬢。刺激の強い肩書をひっさげ、17年10月にデビューした。「ヘアメークの専門学校に行きながら、その学費を払うために都内のキャバクラで働いていました。そこのお客さんでプロレス好きの方がいて、同伴で見に行ったのがきっかけでした」。学校に通い、そのまま寝ないで働いていた当時のジュリアは、リングで死にものぐるいで戦う女性の姿に「元気をもらった」。自然と1人で観戦するようになり、アイスリボンのプロレスサークルに通い始めると、テレビ局の密着ドキュメンタリーの話が決定。そのままプロレスラー人生が始まった。

小波(左)を攻める
小波(左)を攻める

しかし、現実は厳しかった。「何もできなかった。受け身なんてとんでもない。前転、後転も危ういし、腕立て伏せもできない。そういうレベルだった。しかも元キャバ嬢、っていう目で見られるから、先輩たちの当たりはかなり強かった。でも、逆にそれで、『なんでこんなやつらに言われなきゃなんねえんだ。負けてたまるか』という気持ちが芽生えて打ち込めた」。怒りを力に変えた。

スターダムに嵐を巻き起こすジュリア(撮影・横山健太)
スターダムに嵐を巻き起こすジュリア(撮影・横山健太)

「死ぬときにプロレスラーになって良かったと思って死にたい」。ジュリアは移籍を決めた理由をこう語る。「(前所属は)小さい団体だったから、どんなに頑張っても雑用が多く自分の練習時間も取れない。お給料も少ないから、治療や自分磨きにお金をかけることができない。お金じゃないっていったら、すごいロマンチックで夢があってかっこいいかもしれないけど、自分が30歳、40歳になった時、体はどんどんボロボロになり、貯金もできませんでした。どうやって生活していくんだろう、って将来を考えた時に不安になって…。すべてプロレスのために生きる。それができるのはスターダムしかない」。トップになるために迷わず業界最大手に移る道を選んだ。

移籍後は「やりたかったこと、でもできなかったことを1つずつ今できるようになってきている」。特に今は体作りに力を入れる。コロナ禍でジムに行けない時期の3月にはトレーニング器具を購入し、“自宅ジム”を整備。この6月からは故木村花さんが通っていたパーソナルジムに声をかけてもらい、週4回本格的なボディーメークを始めた。「写真を見れば一目瞭然だけど、腹筋も割れてきた。私の試合スタイルはバチバチ系だから、それなりにダメージが大きい。それに耐えられる体作りもしている。プロレスラーである限り、終わりなき戦いです」。

20年7月17日、スターダムエクスプロードインサマー2020で小波(左)を攻める
20年7月17日、スターダムエクスプロードインサマー2020で小波(左)を攻める

ジュリアが目指すのは、「心を揺さぶるプロレス」だという。参考とするのは80年代から90年代にかけて日本中を熱狂させた全日本女子プロレスだ。「昔の全女のプロレスはすべてがリアルに見える。今は(リアルを)あまり感じることがなくて、そこが問題点というか…。全盛期の女子プロレスは人間の感情がすべてさらけ出されていた。リングの上はやるかやられるか、食うか食われるか。それに刺激を受けて、それを見た人が何かを感じる。私たちは人の感情を揺さぶらなきゃいけない。私ができるのはそれしかない。苦しい、悲しい、つらい、嫉妬、いろんな感情を隠さず出していきたい。それが少しでもスターダムや女子プロレス業界の刺激になればいい。それが今の時代に受け入れられるかどうかは分からないから、怖くもあるけれど…」。

5月に急逝したライバル木村花さんについては「まだ話せない…」。強烈なプロ意識と葛藤を胸に、さらに成り上がる。【高場泉穂】

スターダムエクスプロードインサマー2020で小波に勝利し拳を突き上げる
スターダムエクスプロードインサマー2020で小波に勝利し拳を突き上げる

◆ジュリア 1994年(平6)2月21日、英国・ロンドン生まれ。イタリア人の父と日本人の母を持つ。アイスリボンの練習生を経て、17年10月にデビュー。18年にはAbemaTV「格闘代理戦争」で総合格闘技にも挑戦。19年10月にSNSでアイスリボン退団を発表し、同11月にスターダム正式入団。20年1月4日には新日本東京ドーム大会のスターダム提供試合に出場。162センチ、55キロ。得意技ステルス・バイパー、グロリアスバスター。

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