スギ、ヒノキ、ブタクサなどに反応する花粉症(というかアレルギー性鼻炎)のため、かつて、季節によっては1日数十回くしゃみが出る時期もあった。当時、1度くしゃみが出始めると、その日はダムが決壊したかのように爆発的な回数を連発する破滅的状況になってしまい、鼻が詰まるわ、目からは涙が流れ続けるわで、業務遂行不能に陥ることもしばしばだった。

十数年以上前からそういった時期には、処方してもらった鼻炎薬「アレグラ」を朝晩飲み点鼻薬も併用するなどして、くしゃみの回数をなんとか減らし続けて今に至っており、一般的にスギ花粉が多くなるとされる2月を迎え、現在も同様の対処をしている。

しかし先週くらいからか。すでに花粉が飛び始めたのか別の理由なのか正確には分からないが、換気のため窓を開けた後などに明らかに、鼻がとたんにムズムズして「くしゃみが出そうになる」状況になることが増えてきた。

ただ、コロナ禍が続く現在、感染原因となる飛まつを発生させるくしゃみを、周囲に人がいる場所や屋内などですることは、たとえマスクをしていようとも、できる限り避けたい。

コロナ禍以前は、アレグラや点鼻薬によりある程度コントロールできていることもあり、たまに単発で出てしまうくしゃみをそこまで本気で止めようとは考えなかったが、今年は真剣に対処せねばなるまい。とはいえ、長年の花粉症生活の中で「くしゃみが出そうな時、ギリギリ寸前で回避する方法」はかなり探究してきたつもりである(※すべて完全に個人的な経験則に至るもので医学的根拠などがあるか不明)。

あくまで筆者の場合だが、鼻がムズムズするなど、くしゃみが出そうな気配を感じたらすぐ<1>「鼻の上部付近を手の指で軽くつまんだり何度か叩くなどする」、という簡単な動作でおさえることにこれまで、何度も成功してきた。

ただ今は新型コロナウイルスの感染防止対策として「手指で顔を触らない」ことが鉄則とされているから、(マスクを着けていることが多いといえども)<1>の方法はできるだけ使いたくない。

そこで次に効果的と思っている<2>「顔面の表情筋をフルに動かし、眉間にしわをよせて鼻の穴を広げつつ、般若あるいは金剛力士像のような表情をとる…というアクションを数回繰り返し、鼻のムズムズ感を強引に消し去る」というテクニックを最近、積極的に導入している。

同時に<3>「意識を臍下丹田に集中させて瞑想状態に入り、副交感神経系が優位になるような吐く息が長い腹式呼吸法で鼻を一切使わずに口のみで極めて静かに呼吸しつつ、くしゃみが出そうな感覚そのものが抹消していくイメージをする」という方法も並行的に行ったりもする。

実際、<2>や<3>などの戦術を駆使し、コロナ禍のこの約1年、今のところ会社内では、くしゃみが出そうな鼻のムズムズ感が何度も襲ってきたものの、結果的にギリギリで回避し、1度もくしゃみをしないことに成功している。

ただ、こうしたテクニックをしてくしゃみが止まった場合、筆者の場合、ムズムズ感を我慢した代わりの生理的反応としてなのか、目から涙が出始めてしまうというよく分からない悩みがある。しかし、目の粘膜もウイルス感染する可能性があるとされているから、こちらも指で気軽にこするわけにいかない。ティッシュがない場合、目から涙がこぼれ落ち続けるのをそのまま耐える状況にならざるを得ないのだ(※どうでもいいがこの状況にスーパー店内や乗り物の中でもよくなる)。

数日前、社内でくしゃみが何度も出そうになり、<2>と<3>の技術で耐えきった際などは、我ながら明らかに異様だった。マスクをしつつ眉間にしわを寄せ、社会情勢かなにかに強く憂いているか、もしくは政治的問題かなんかに憤怒しているかのような、鬼のような表情を断続的に浮かべ続け、その後、目からはぽたぽたと落涙。

しかも、近くのテレビで比較的感動的な内容のドラマが流れていたから、はたから見ると、「この人、ドラマに感動して泣きながら仕事をしているのか? いよいよ大丈夫か?」「そしてそれを隠すためにわざと眉間にしわを寄せてごまかしている可能性もあるな、こりゃ」などと疑われた可能性も十分あったと言わざるを得ない。

実際、くしゃみが出ないように表情筋をゆがめまくりつつ涙をこぼしていた時間帯、後輩計2人が筆者に何か話しかけようと接近してきたが、我が顔面を視認した後すぐ、不自然にきびすを返して離れていったのを確認している。

「くしゃみが出そうになり鼻がムズムズしてきた際、いかにギリギリで食い止めるか」問題と向き合う季節がやってきた。東京がコロナ禍緊急事態宣言下にある今年はさらに真剣に取り組みたいがここ何日か、我が鼻腔にかなり不穏な雰囲気が漂っている。写真は本文とあまり関係ないが都庁外観
「くしゃみが出そうになり鼻がムズムズしてきた際、いかにギリギリで食い止めるか」問題と向き合う季節がやってきた。東京がコロナ禍緊急事態宣言下にある今年はさらに真剣に取り組みたいがここ何日か、我が鼻腔にかなり不穏な雰囲気が漂っている。写真は本文とあまり関係ないが都庁外観

コロナ禍緊急事態宣言下の今年は、花粉症シーズンに突入しても最も基本的な対処法の<1>は使えず、くしゃみが止まっても指で涙をぬぐうこともできない。かなり厳しい“くしゃみ鎮圧との戦い”を強いられることになりそうだが、「『会社内でのくしゃみ0回記録』を1日でも長くのばし続けてささやかな達成感に浸る」ことくらいしか当面における人生の楽しみがないため、意地でも頑張りたいところ。【文化社会部・Hデスク】