昨年1月に亡くなった歌手やしきたかじんさん(享年64)の妻、家鋪さくらさんが、たかじんさんの元弟子、打越元久氏の発言で名誉を傷つけられたとして1000万円の損害賠償を求めた裁判は、28日、大阪地裁で判決が言い渡され、打越氏は300万円の支払いを命じられた。

 杉浦徳宏裁判長は、打越氏が言及したさくらさんの言動の真偽については、争点にならないと評価。さくらさんはあくまでも「私人」であり、私人の私生活の中での発言には「公共性はない」とした。さくらさん側にとっては、事実上の“完勝”となった。

 訴状などによると、打越氏は昨年秋、インターネットラジオ番組で、百田尚樹氏のノンフィクション本「殉愛」について、ほとんどが虚偽だと主張。さらには、さくらさんが、たかじんさんの看病中に「がんがうつった(感染した)」などと主張し、金銭を要求したなどと話した。

 被告の打越氏側は、発言にいたったさくらさんの言動をめぐる「真実性」を訴え、結審となった前回裁判では、たかじんさんに最後までついていた元マネジャーを出廷させ、発言の真実性を訴えていた。

 しかし、裁判長は、発言の真偽を問わず「私人の私生活での発言に公共性はない。被告の発言によって、原告が社会的評価を下げられ、精神的な苦痛を与えられた」とし、300万円の支払いを妥当とした。

 判決を受け、さくらさん側代理人弁護士は「(判決の)中身をじっくり見ていないが、感覚としては主張を認めていただけたのかな、と。一般的に(300万円の支払いは)裁判所にひとつの評価を頂いたと思う」と語った。被告側に控訴の動きがあれば、その時点で対応を決める方針。

 また、被告側が別案件で訴訟準備がある点について、同代理人は「(さくらさんも)知っているようだが、いずれにせよ、正式に動いてからの判断になります」とした。

 一方の打越氏はこの日、法廷に姿を見せなかったが、代理人の弁護士事務所を通じてコメント。「こちらの主張が認められず、たいへん残念です。超人気作家が、有名歌手の妻と組み、『ノンフィクション』とうたいながら、虚偽事実を並べ立てた本を出したので、義憤を感じ、私なりの方法で誤りを指摘しました。その行為によって、多額の賠償責任を負うことになるとすれば『社会正義とは何か』という素朴な疑問を抱かずにはおれません」とした。

 さらに、今後ついては「弁護士と相談の上、控訴して高等裁判所の判断を仰ぎたい」と言い控訴の構えを見せている。