アニメ映画「ONE PIECE FILM GOLD」(宮元宏彰監督、23日公開)が、世界に羽ばたいた。シリーズ史上初の海外でのプレミア上映会が、このほど、UAEの首都アブダビで行われた。「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」もプレミアを行った、世界屈指の高級ホテル「エミレーツ・パレス」での上映会には、同国の王族もお忍びで駆けつけるなど、国家的なイベントとなった。

 日本から8000キロ離れたアブダビが「ONE PIECE!!」の大歓声と熱狂に包まれた。15日夜(日本時間16日)に開催された「ゴールデンプレミア」には関係者を含む1000人が集結。チケットの最低価格は、1回の映画観賞が30ディルハム(約855円)程度のUAEでは破格の399ディルハム(約1万1370円)だが、一般販売分をめぐり中東全土で争奪戦が展開。勝ち抜いた約600人のファンは、最高気温51度をはね返さんばかりの熱量で会場に押し寄せた。

 劇場「オーディトリアム」に至る廊下には幅3・6メートル、長さ70メートルのレッドカーペットが敷かれた。関係者は「こんなに長いのはUAEにはない」と絶句した特注品だ。“麦わらの一味”の航海士ナミ役の声優岡村明美、カリーナ役の女優満島ひかり(30)とバニーガールのビット役の三吉彩花(20)が立つと“麦わらの一味”の料理人サンジの名セリフ「ナミすわ~ん」の大歓声が巻き起こった。同所では昨年12月に「スター・ウォーズ-」のプレミアも行われたが、ゲストの1人は「『スター-』よりも規模が大きい。UAEでこれほど大きなイベントは見たことがない」と驚いた。

 それほど中東での「ONE PIECE」人気は絶大だ。尾田栄一郎氏の原作漫画の英語版が流通し、カタールのアニメ専門局「スペーストゥーン」などにより各国でアニメを見ることができる。日本では原作が19年、テレビシリーズが17年、継続しているが、アブダビのプレミアに訪れたファンの多くが10年以上、作品を追い続けていた。

 UAEの王族数人とムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム首相も映画を楽しんだ。関係者によると、王族らは来場を公式に発表すると護衛を多数、随行させるなど大げさになり、大好きな「ONE PIECE」を静かに楽しめなくなるからと、あえて名前を含め全てを公表せず非公式で訪れたという。

 上映前の舞台あいさつに岡村と満島、三吉が登壇すると、劇場内に歓声と口笛が響き渡った。岡村は「ナミ!!」と連呼され「興奮して何を言うか忘れてしまうくらい。アブダビの皆さんに直接、映画を届けられて本当にうれしい。麦わらの一味(の声優陣)も会いたがっておりました」と感激のメッセージを送った。

 満島は、ファンの反応を体感したいと劇場に戻って観賞し「すごい楽しかった!! (盛り上がりは)サッカーの試合を見ているみたい。ギャグも通じていた」と喜んだ。上映後のファンからも「本当に驚いた」「敵のテゾーロが印象的」「『ONE PIECE』に友情、絆…全てを教えてもらった。最高の映画だ」など絶賛の声が相次いだ。現在、世界各国での公開に向けて調整中の「-GOLD」が、中東の追い風を背に、世界の映画の“海賊王”を目指す。【村上幸将】