小松政夫さん(75)が元気だ。師匠である植木等さんとの43年にわたる思い出を書いた著書「昭和と師弟愛」の発売を前に取材したけれど、昔の記憶も鮮明で、時折、おなじみの映画評論家淀川長治氏の物まねなどを交えながら、楽しい「独演会」だった。

 小松さんと言えば、淀川さんの物まねをはじめ、「小松の親分」のキャラクターや「ねえ、おせ~て」「もーイヤ、もーイヤこんな生活」「ながーい目で見てください」「あんたはエライ!」などのギャグも実在のモデルがいて、植木さんも認めた小松さんの人間観察力から生まれました。ギャグの数は86個もあるそうです。

 例えば、「ねえ、おせ~て」は飲み屋で水商売風の女性が二枚目の男に「私が悪いところは何でも直すから、ねえ、おせ~て」と泣き声で訴えているところを見て生まれたものです。「もーイヤこんな生活」はホステスさんの会話を小耳に挟んだもので、「ながーい目で見てください」はオカマの独り言だそうです。

 75歳になった今もお笑いに情熱を燃やし、日本喜劇協会の会長を務めています。10月は東京・日比谷シアタークリエ公演「土佐堀川」に、高畑淳子演じる主人公広岡浅子の義父役で出演中です。ちょっと居眠りする場面で笑いが起こり、淀川さんの物まねもちらっと登場します。取材の時に小松さんは「70年すぎれば怖い物はない。コメディアンにこだわっていきたい」と話していました。その言葉通り、小松さんの自由な演技が舞台をイキイキと弾ませていました。