「第32回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞」(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が、11日までに決まった。助演男優賞は「閉鎖病棟-それぞれの朝-」などの作品が評価された渋川清彦(45)に、作品賞は「新聞記者」にそれぞれ決まった。

   ◇   ◇   ◇

渋川清彦に電話が入った。見知らぬ番号に戸惑いながら出ると、笑福亭鶴瓶(67)だった。「おめでとう。ほんまにうれしいわ。今度、食事でも一緒にしようや」と祝福された。鶴瓶とは受賞作「閉鎖病棟」で共演。渋川は、鶴瓶に殺される凶暴な患者の重宗役。殺される場面の撮影前日に焼き肉をごちそうになったという。「『殺されるけど、よろしくな』と。よく人を見ている、すごい人です」。

出演場面は少ないが、強烈なインパクトを残した。「自分の力だけじゃない。キャスティングしてくれた監督、思いっきりあばれさせてくれた看護師役の子、凶暴な顔を作ってくれたメークさん、乱暴場面を全力で受け止めてくれた小松菜奈さんに感謝したい」。

昨年は14本、今年も6本の映画に出演した。「閉鎖病棟」のほか、稲垣吾郎、長谷川博巳と親友役を演じた「半世界」や「WE ARE LITTLE ZOMBIES」が受賞対象。今、監督が最も起用したい役者の1人で「役の大小は関係ない。基本的に来た順で、おれがその人を好きかというポイントも大きい」。

数年前までアルバイトをし、40歳ごろから俳優として面白くなったという。やりたい役は「寅さんみたいな、人情あるアウトローをやってみたい」。来年も数本の映画出演が決まっている。【林尚之】

◆閉鎖病棟-それぞれの朝- 死刑執行が失敗し生きながらえた秀丸(笑福亭鶴瓶)が入院する病院を舞台に、過去や事情を抱えた患者を描いた。渋川は衝動的に暴力を振るう男役。ほかに綾野剛、小松菜奈ら。平山秀幸監督。

◆半世界 高村(稲垣吾郎)は炭焼きで生計を立てている。中学時代の旧友沖山(長谷川博己)が地元に帰ってきた。岩井(渋川)も含めた旧友同士が再会し、友情や家族を描いた。阪本順治監督。

◆渋川清彦(しぶかわ・きよひこ)1974年(昭49)7月2日、群馬・渋川市生まれ。ファッションモデルを経て、98年に映画「ポルノスター」で俳優デビュー。13年に映画「そして泥舟はゆく」で映画初主演。18年にNHK大河ドラマ「西郷どん」に板垣退助役で出演した。

▽助演男優賞・選考経過

渋川についての評価が高い。「重要な助演者になれる人。俳優らしい人」(渡辺武信氏)「ミスター助演男優。『狼煙が呼ぶ』は主演作だけど、これもかっこよかった」(石飛徳樹氏)。1回目の投票で決定。