映画「唐獅子仮面/LION-GIRL」が26日に公開される。「デビルマン」「マジンガーZ」「キューティーハニー」などで知られる巨匠・永井豪氏が描き下ろしたオリジナル漫画が原作だ。光武蔵人監督(50)聞いてみた。
◇ ◇ ◇
壮大な世界観を持つ作品だけでなく「ハレンチ学園」など、バイオレンス、エロスを幅広く描き、他に比類なきレジェンド永井豪氏(78)による書き下ろしの原作。
「僕は、永井先生の大ファンなんです。元々、企画を何かやらせていただけるということになって、いろんなオリジナルの提案をしてたんですけど、うまくいきませんで。やっぱり日本だと有名漫画家さんの原作がないとダメなんですかねという話になって、例えば永井先生の原作とかがないとダメなんですかと言ったら、なんかいい話になって、ぜひそれでお願いしますっていう話になった感じです」
レジェンドもレジェンドの永井豪氏。「あばしり一家」「バイオレンスジャック」「イヤハヤ南友」「獣神ライガー」など、昭和の時代から50年以上にわたり、ヒット作を量産し続けてきた。
「僕は『デビルマン』が一番大好きな作品です。大変な壮大な作品で衝撃的でしたよね。『第四の壁』を破って、漫画の主人公が読者に語りかけるっていう形とか、常に衝撃的でしたね。今回の映画の最後でも、主人公が画面に向かってしゃべりかけるということをやらせていただきました」
「唐獅子仮面」は書き下ろし。映画用に永井氏が書き下ろした。
「いつか『デビルマン』の映画をやらせていただきたいと思ってるんです。最初にコラボレーションさせていただく上で、ちょっとハードルが高いなと思っていたら『キューティーハニー』を全編アメリカで撮影するという形で、最初に提案をさせていただきました。それはコロナ前の話なんですけど、その時に『キューティーハニー』の舞台版の企画が進行していて、今はちょっとハニーちゃんを血まみれにはできないんだみたいな話になったんです。それで代わりに永井先生が『唐獅子仮面』を描き下ろしてくださって。非常に光栄なことです。永井先生のタッチの今まで見たことのないオリジナルの画がメールで送られてきた時には、本当に言葉が出なかったですね」
「唐獅子仮面」は、テーマに天災、コロナ、エイズ、戦争、人種差別と現代社会につながるものを取り上げている。
「そうですね、僕はアメリカのロサンゼルスに住んでいて、コロナ禍で法的なロックダウンになって、日が沈んだら本当にもう外に出られないっていう世界で。それで、脚本を書いたんですね。そんな状態で、しかも当時のアメリカはトランプ政権で、本当にコロナとトランプというダブルパンチで。なんかね『外に出たら撃ち殺せ』は、本当にそうなんですよ。人種間のテンションも高かったですしね。トランプがチャイナウイルスなんて呼ぶもので、アジア人に対する風当たりも強かったわけです。目の前で、そんな100年に1度のパンデミックが行われてる時に、フィクションで世界の終わりを描くのはなかなか難しくて」
撮影はコロナ禍が一番ひどかった2021年にロサンゼルスで行われた。
「おかげ様で感染者は出なかったんですけど。アメリカ俳優協会の決めた規則に沿って、撮影しなきゃいけなかった。十分にリハーサルができなかったりとか、なかなか厳しい中での撮影になりました。基本的に全部アメリカ人キャストで、言葉も英語です」
唐獅子仮面に変身する主人公の唐獅子牡丹を演じるのはトリ・グリフィス。
「なんて言うんですかね、やる気のかたまりというか。まだ新人なんですが、500人近いオーディションをやって、その中で一番肝が座っていました。永井先生の作品のヒロインなので、ヌードシーンも多いんです。それもいとわずに、本当に頑張ってくれました。撮影当時は22歳でした」
日本だけではない。アメリカとドイツでは、既に配給されている。
「英語の作品なので、国際的にも展開したいと思っています。アメリカでは、もう配信リリースされていて、おかげさまで見てくれた人にも非常に評判が良くって。普通、この規模の映画で、あんまり宣伝してないものは、ニューヨーク・タイムズなんかには引っかからないんですけどね。ニューヨーク・タイムズの『今週見るべき5本の映画』の1本に選んでいただいたりとか。そういう意味ではこうインパクトを残してるんです。エンドユーザーというか、観客のところまで届けば、この映画の真摯(しんし)なメッセージを理解して楽しんでくれてますね」
新たな永井豪ワールドの誕生だ。【小谷野俊哉】
◆光武蔵人(みつたけ・くらんど)1973年(昭48)5月24日、東京都生まれ。90年(平2)に米国の高校へ留学。サンフランシスコ芸大をへて、カリフォルニア芸大に転入。96年に学士号、98年に同大学院修士号取得。ロサンゼルスでテレビコーディネーション会社で働いた後、フリーのテレビディレクター、ラインプロデューサーなどとして働く。04年に映画「Monsters Don’t Get to Cry(邦題『モンスターズ』)」で長編監督デビュー。俳優活動も。09年に映画「サムライアベンジャー/復讐剣 盲狼」でファンタスティック映画祭の最優秀長編映画賞。13年に映画「女体銃 ガン・ウーマン/GUN WOMAN」でゆうばり国際ファンタスティック映画祭の審査員特別賞。ロサンゼルス在住。
▼映画「唐獅子仮面/LION-GIRL」 時代は2045年。謎の隕石(いんせき)がぶつかり、地球は陸地の99%を失い、人口は7000人になっていた。文明は滅び、わずかに残った日本の関東平野の東京に人々は暮らしていた。隕石から発せられる光を浴びて死ななかった人間は、アノロックと呼ばれる魔獣に変わってしまう。母親の胎内で光を浴びた人間はマン・アノロック(魔獣人間)と呼ばれる人間の理性と魔獣の能力を備えた存在となる。主人公の牡丹は、唐獅子仮面に変身して悪と対決する。災害、コロナ、バイオレンス、お色気、愛、任侠などのテーマがいくつも重なっている。



