歴史的一戦の裏側に迫る「G1ヒストリア」は、07年天皇賞・春を制したメイショウサムソンにスポットを当てる。鼻差の接戦をものにした人馬の経験とは-。主戦騎手として皐月賞、ダービーも制した石橋守調教師(56)が当時を振り返る。

07年天皇賞・春を鼻差で制したメイショウサムソン(中央右)
07年天皇賞・春を鼻差で制したメイショウサムソン(中央右)

トレセンでは“天皇賞はやっぱり京都”という声を非常に多く聞いた。騎手時代にメイショウサムソンで春の盾を制した石橋師もその1人だ。「やっぱり京都っていうイメージがある。天皇賞は歴史があるレースだし、春は距離も変わってないから」。調教終わりで泥まみれになった革ジャンを拭きながら、師は16年前の春を振り返った。

07年4月29日、石橋師はメイショウサムソンの馬上で懸命にムチを入れていた。向正面では中団を追走。少しずつ押し上げて、2番手で直線を迎えた。内から抜け出したトウカイトリックを追い詰めたところで、エリモエクスパイアが外から強襲してきた。鞍上の懸命な鼓舞にサムソンも応えた。「なんとかしのぎきれるかなと。ああいう接戦ならしぶといタイプ」。その思い通り、粘り強くわずかに出た鼻差を守り切った。

 
 

早めの仕掛けも、ゴール前の感触も、石橋師がサムソンを理解していた証しだった。新馬戦前から毎日のように調教に騎乗し、手前の替え方、体の緩さなど、馬の課題にじっくり向き合った。「使うたびに強くなった。手前も競馬を使うたびに直ってきた。力強さがついていったのは乗ってて感じたね。脚もとが無事だったからよかった。無事是名馬って言うじゃん」。クラシックを迎えるまでに9戦を消化。ともに調教を重ねながら、皐月賞とダービーの2冠まで導いた。

石橋守調教師(2016年5月22日撮影)
石橋守調教師(2016年5月22日撮影)

ダービー以来のG1・3勝目。オーナー・松本好雄氏にとっては初めてとなる天皇賞・春の勝利だった。「乗せてもらって感謝の気持ち。恵まれたよな。乗せ続けてくれたオーナー、(07年2月まで管理していた調教師の)瀬戸口さんに感謝しきれない。その気持ちは強いね」と感謝の言葉を重ねる。

施設が新しくなれど、京都は酸いも甘いも経験した場所だ。「勝ったのはそうだけど、菊花賞を負けたのも京都だし…。そういう思い出もある」と苦笑い。人馬の苦楽がつまった淀の舞台は、これからも歴史の目撃者となり続ける。【下村琴葉】

07年天皇賞・春を制し、関係者と写真に納まるメイショウサムソンと鞍上の石橋守騎手
07年天皇賞・春を制し、関係者と写真に納まるメイショウサムソンと鞍上の石橋守騎手

◆メイショウサムソン 2003年3月7日、浦河町生まれ。生産者は林孝輝。父オペラハウス、母マイヴィヴィアン(母の父ダンシングブレーヴ)馬主は松本好雄。栗東・高橋成忠厩舎所属。通算成績は27戦9勝。主な勝ち鞍は06年皐月賞(G1)、ダービー(G1)、07年大阪杯(G2)、天皇賞・春、秋(G1)など。総賞金は10億6594万9000円。