高齢化社会の波は、間違いなくサッカー界にも押し寄せている。ポルトガルのロナウドが41歳39日にして6大会連続でW杯の舞台に立った。同じ日にクロアチアのモドリッチは40歳281日で続いた。
W杯の大会最年長出場記録は、18年ロシア大会のエジプトGKエサム・エルハダリの45歳161日。息の長いGKを除くと、94年米国大会のカメルーンFWミラの42歳39日に続く偉業となった。
衛生・医療面の進化に伴い、長寿大国日本では人生100年時代と言われる。それは世界のサッカー界にも当てはまるようだ。
今大会、40歳以上は史上最多8人を数える。前回カタール大会は35歳以上が41人、40歳以上は1人だけに大幅に増えた。なお36年前の90年のイタリア大会は35歳以上はわずか7人だった。つまりインターネットの爆発的な広がりによって、90年代以降は選手を取り巻く環境は飛躍した。
情報が世界を駆け巡り、先進的知見が共有できるようになった。トレーニング、栄養、医療やリカバリー。加えて競技への向き合い方も向上した。昔なら「もう35歳になったから引退しようか」と科学的根拠の伴わない「常識」という慣習にとらわれていた。今は数値が測れるため「まだ体力は落ちてない、これだけできる」と自身の状態が可視化できるのは大きい。
そしてもう1つ見逃せないのは、マーケティング面だろう。選手の社会的価値は高まり、ピッチ内外で多くの価値を生み出す存在となった。それに伴うサッカービジネスは右肩上がり。顕著なところ言えば、W杯の放映権料は98年フランス大会は日本国内で約5・5億円だったものが、前回のカタールで約200億円まで高騰。今回はさらに300~350億円と言われる。スター選手はより求められる時代となっている。
長寿の理由はさまざま。ただ言えることは実力あっての世界ということだ。今もロナウドは得点を挙げ、今もモドリッチは創造性あふれるプレーで喝采を浴びている。そこには突き抜けた選手ゆえの哲学がある。
ふと59歳のJリーガー、カズの言葉を思い出す。
「毎日練習を続ける中で、自分はまだうまくなりたいと本気で思っている。それがモチベーションかもしれない」
飽くなき向上心、その裏にあるのは「理想」だ。19世紀の詩人サミュエル・ウルマンは代表作「青春」にこう記した。
「年を重ねただけでは人は老いない。人は理想を失うとき初めて老いる」
【佐藤隆志】



