前橋育英(群馬)のFW飯島陸(3年)が初戦で4得点を挙げるなど通算7ゴールで大会得点王を獲得した。決勝は不発も決勝点につながるシュートを放ち、徹底マークを受ける中で存在感を示した。入学前からの目標だった全国制覇に加えて個人タイトルも手にし、今春からは昨夏の総理大臣杯を制した法大に進む。

 試合終了の笛とともに、飯島の視界は涙でみるみるかすんでいった。必死に上を向いたが、思いがあふれた。0-0の後半ロスタイム2分、思い切って左足を振り抜いたシュートはDFの正面。「やっちまった」と思ったところに後輩の榎本が反応し、決勝点が生まれた。身長166センチのエースは得点王に「まだ決めきれてないところがあった。もっといけたかな」と照れ笑いで喜んだ。

 3年前の1月12日。当時中学3年の飯島は埼玉スタジアムの正面スタンドにいた。憧れの先輩だった前橋育英FW渡辺凌磨(現インゴルシュタット)らが延長の末に優勝を逃し、泣き崩れていた。「自分が育英を絶対に優勝させるんだ」。星稜イレブンが優勝杯を掲げる姿を見て心に誓い、翌日の入学試験に向かった。 前回決勝は0-5で青森山田に完敗。シュートを1本も打てずに途中交代した飯島は、今度はベンチから先輩たちの悔し涙を見ることになった。「課題は決定力」と、翌日から始めた自主練習では1日最低100本のシュート練習を重ねた。苦手を克服した左足でのシュートが優勝につながった。

 卒業後は、山田監督と同じ法大に進む。「活躍してプロになって、日本代表にも入りたい」。大志を抱く飯島が手に持つ黄緑色のスパイクは、利き足とは逆の左足の方が使い込まれ、黒く汚れていた。【岡崎悠利】