紙一重で届かなかった。0-0の後半ロスタイム2分、流通経大柏のDF三本木達哉(3年)が前に出る。相手FW飯島のシュートを腹でブロック。はね返りにも詰めたが、伸ばした左足の下をFW榎本のシュートが通過した。無情のV被弾。マンマークした飯島には得点を許さなかったが「彼だけ抑えても…。延長120分でも走り続ける自信はあったのに」と、悔しがった。

 10大会ぶりVへの秘策だった。前夜、本田監督の部屋に呼ばれ「行くぞ。エース殺しだ」と今大会初先発を言い渡された。ミッションはただ1つ、準決勝まで7得点の飯島つぶし。「どこにでもついていく」と攻撃を放棄し、前半26分のスライディングブロックなど仕事をさせなかった。昨夏の全国総体で優勝を遂げたマンマーク戦術。選手権で初解禁も、最後の最後、こぼれ球が相手に転がった。

 三本木の周囲をカバーしたMF宮本主将は「力不足」と認めたが、前橋育英と並ぶ今大会最少1失点。堅守で夏冬とも全国の決勝に進んだ。来季の主将候補、U-18日本代表DF関川は「自分や熊沢が中心となって負けないチームをつくりたい」。冬の日本一奪還へ涙はこらえた。【木下淳】