Jリーグで唯一、勝ち残る鹿島アントラーズが6度目の決勝トーナメントで初めて初戦を突破した。アウェーで上海上港(中国)に1-2で敗れるも、2戦合計4-3(第1戦3-1)で勝ち、8強に進出した。先制を許すも、前半42分にMF土居聖真が“おしゃれヒール”で貴重なアウェーゴールを奪って同点。終盤に不可解なPKで2点目を失うも、GKクォン・スンテの好セーブなどで粘り抜いた。準々決勝は8月末から、相手は抽選で決まる。

 戦い抜いた選手の顔に安堵(あんど)の笑みが広がった。派手な喜びはない。そんな力はなかった。前日に「歴史を塗り替える」と誓った土居は「今季一番タフな試合だった」と話して「このメンバー、スタッフで実現できてプラス自分の得点で今まで破れなかった(初戦の)壁を破れて、素直にうれしい」と喜んだ。

 先制され、あと1点失えば2戦合計で逆転される。その重い空気を一変させたのは、何ら力みのないシュートだった。前半42分、DF安西の左クロスに合わせたのは左足ヒール。上海入り後の練習でも決めていた形で「肩の力を抜いてプレーできた」。軸足の後ろを通したボールは、コロコロとゴールへ。貴重なアウェーゴールは最後に響いた。

 終盤に乱闘寸前にもなった熱い試合。後半36分に顔に当たったDF昌子がハンドを取られてPKも奪われた。だが、GKクォン・スンテも好セーブを連発して相手の猛攻に耐え抜いた。

 93年5月16日、Jリーグ開幕戦のジーコのハットトリックで鹿島の歴史は幕が開いた。土居は下部組織時代にブラジルで“ジーコ杯”に参加。11日にジーコ氏が鹿島を訪れた際、その話題が出て「ジーコさんの脳の引き出しに自分が刻まれていた」。精神は受け継がれている。25年後の18年5月16日。鹿島の歴史はまた1ページ、塗り変わった。【上海=今村健人】