湘南ベルマーレが、クラブ創設50周年の節目に初優勝を飾った。初めて進んだ決勝で横浜F・マリノスを1-0で下し、賞金1億5000万円を獲得した。前半36分にDF杉岡大暉(20)が決めたミドルシュートを守り抜いた。J1、天皇杯と合わせた国内3大タイトルの獲得は94年度の天皇杯以来。J1昇格4度、J2降格4度の「エレベータークラブ」が、就任7年目の曹貴裁監督(49)の下で培った、90分攻守で躍動する「湘南スタイル」を貫き、悲願のタイトルにたどり着いた。

キックオフと同時に「湘南スタイル」が躍動した。果敢にゴール前に攻め込み開始わずか1分で2本のシュートを浴びせ、相手を面食らわせた。前半36分、DF杉岡が23メートルのミドル弾を決め先制。最優秀選手に輝いた20歳は「立ち上がりから積極的にいくのがスタイル。狙い通りで完璧だった。これが湘南のサッカーだと全国に広められた」と胸を張った。

横浜の猛攻をしのぎ、優勝が決まった瞬間、曹監督はピッチに倒れたまま涙で動けなくなっていた。攻守でアグレッシブな「走る湘南スタイル」を軸に今季7年目。練習から「プレスにいったふり」「パスをもらいにいくふり」は許さず、練習で気を緩めれば、先発選手が、次の試合でベンチ外になることは日常茶飯事だった。

今回のルヴァン杯は13試合で計32選手が出場。主力とサブの垣根がない総合力での栄冠に、曹監督は「左右にしっかり体を張って相手シュートをブロックする原則的なものを、今日出た選手が出ていない選手と切磋琢磨(せっさたくま)し、ピッチの中の温度を下げないでやってくれた。選別しないでやったことが、こういう結果につながった」と振り返った。

99年にメインスポンサーのフジタが撤退し、クラブは00年から長いJ2生活を経験。潤沢な資金がない中、若手を一から育てる方針でチーム強化を図った。育った選手が国内のビッグクラブに移籍する一方で、杉岡やMF金子ら将来の日本代表候補が「若手もベテランも分け隔てなく成長できる」と他クラブのオファーを断って加入。ベテランMF梅崎も「細胞から若返らせたい」と「湘南スタイル」を求めて浦和レッズから移籍してきた。地道にスタイルを構築したクラブの努力が大きな財産となり、タイトルへとつながった。

DF岡本は「お金があるクラブがすべてではないと思う。優勝は感無量」と目を潤ませる。だが、優勝の余韻にひたる暇はない。リーグ戦では降格圏内からわずか勝ち点3差の13位で残留争いに巻き込まれている。選手たちは「これで降格したらしゃれにならない」と危機感を口にし、早くも30日のリーグ磐田戦へと切り替えていた。【岩田千代巳】

◆湘南ベルマーレ 藤和不動産サッカー部が前身。フジタ工業、フジタと改称し、Jリーグに94年からベルマーレ平塚として加盟。00年からは新運営会社の下、湘南ベルマーレとして活動。本拠地は神奈川県平塚市のShonanBMWスタジアム平塚。