鹿島アントラーズはMF中村充孝(29)のプロ11年目での初ハットトリックで横浜F・マリノスを下し、ホンダFCとの準々決勝(10月23日、カシマ)に駒を進めた。

負傷明けで約4カ月ぶりの出場となった中村は、前半13分に相手GKの股を抜いて1点目。一度は同点とされたが、同30分にはMF遠藤の右クロスに合わせて2点目を決めた。前半ロスタイム2分には中央付近から持ち上がり、冷静に流し込んでハットトリック達成。技巧派ベテランが本領を発揮した。

立ち上がりは後手に回った。出足の鋭い横浜に対して簡単に失う場面が多く、先制点までシュートはゼロ。中村はこの原因に気がついていた。「全体に下がりすぎ」。前半13分の得点後、喜びを分かち合ったのもつかの間、ボランチのMFレオ・シルバを呼び寄せてピッチ上で“作戦会議”を開いた。「最初けっこう押し込まれるシーンがあったと思うんですけど、そこについて『全体的に下がりすぎ』と話しました。ボランチが下がっちゃうと、どうしても前に重くなくなっていくので、そこは言いました。ああいう機会じゃないとちゃんと話すことはできないので、良い機会でしたね」。復帰弾を祝うより修正を優先した結果、チームが回り始め、結果ハットトリックにつながった。

勝利の立役者となったが、満足はしていない。「(ハットトリックは)素直にうれしいけど、それ以外に前半で2つほどゴール前に入っていけなかったシーンがあったので、そっちのほうがちょっとイメージは残るかな。あとは55分で交代しているので、ナンボ復帰戦と言ってもその時間で交代はプロとしてダメ。もっとコンディションを上げていかないといけない」。大岩監督は「久々の試合で疲労がピークに達しており、次に向けた準備ということで交代させた」と説明したが、中村は指揮官が求めるよりさらに上を目指している。【杉山理紗】