Jリーグは今季から一部試合でビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)を導入する。今では当たり前に耳にするVARだがハッキリしたところは…。今更聞きにくい疑問にJFA審判委員会の扇谷健司トップレフェリーグループマネジャー(49)が答えます。

Q VARはなぜ必要

A 人間には限界値があるでしょ。それをテクノロジーがカバーしてサポートするためかな。

Q 誰が映像を見るの

A 会場外に止めている、改造したトラック内に12台のカメラで撮影した映像を集め、講習を受けて取得した資格を持つ審判員2人がチェックするんだよ。

Q どんな時に使うの

A 何にでも使えるわけじゃないんだ。CKかゴールキックかとか、そんなのには使えない。<1>得点か<2>PKか<3>退場か<4>人間違いか。ボールがないところでの反則など主審が確認できなかった重大な出来事も対象。でも、例えば見ている3割の人が「PK」で4割の人が「いやノーファウル」、残り3割が「シミュレーションだ」って意見が分かれることがあるよね。いわゆる“グレーゾーン”には使わない。VARは「正解」を見つけるのではなく「明らかな間違い」があるかを確認するものなんだ。

Q VARを使う方法は

A 例えばタックルでボールを失った選手が倒れてるとしよう。主審はノーファウルでプレーを続行しているけど、別室のVARはプレーを確認しているんだ。判定が明らかな間違いの可能性があるなという時は、プレーが止まった瞬間にVARが主審に試合を止めるように無線で伝える。主審は片手を耳に当てるポーズで「確認中」という合図を示して、別室のVARと意見交換をするんだよ。主審は「タックルは左足でボールにプレーしているからノーファウルだよ」とか、具体的に理由をつけて説明しているんだ。さらに確認が必要な場合はピッチ脇のモニターで確認します。

Q VARが判定の変更を求めることはあるの

A オフサイドかどうかやボールがゴールに入っているのかとか「今の違いますよ」というのはあるかな。でも原則的にはVARが決めることは1つもない。判断を下すのはあくまでも主審なんだ。

Q “誤審”はなくなる

A 得点が見えなかったとか、そういうものは救えるかな。明確な間違いはなくせると思うよ。

◆VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー) 別の場所で映像を見て確認し、主審の判定をサポートする。Jリーグは18年から試験導入。19年はルヴァン杯準々決勝以降とJ1参入プレーオフ決定戦の全14試合で、元日の天皇杯決勝でも導入された。今季は8日の富士ゼロックス・スーパー杯、J1の306試合、ルヴァン杯のノックアウトステージ13試合、J1参入プレーオフ決定戦1試合の計321試合が対象。アジアのプロリーグでは韓国、中国などで採用している。

◆扇谷健司(おおぎや・けんじ)1971年(昭46)1月3日、神奈川生まれ。99年に1級審判員に登録。07年からはスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)として登録され、10年まで国際審判員としても活躍。J1では222試合で主審を務め、17年で引退した。