若者の街が陸上競技場になった-。20年東京パラリンピックへ向けたイベント「世界最速への挑戦」が5日、東京・渋谷のど真ん中で行われた。

 スクランブル交差点にほど近い公道、通称「ファイヤー通り」を封鎖して競技用トラック3レーンを設置。T44クラス(片足下腿=かたい=切断など)60、100メートル世界記録保持者のリチャード・ブラウン(26=米国)、今夏の世界選手権200メートルで金メダルのジャリッド・ウォレス(27=同)、リオ・パラリンピック100メートル銅メダルのフェリックス・シュトレング(22=ドイツ)の3人が、60メートルの世界新を目指して競い合った。

 スタートからリードを奪ったブラウンが最後は両手をビルの間からのぞく青空に突き上げて、トップでゴールに飛び込んだ。自らの世界記録6秒99には届かなかったが、7秒14の好タイム。コース脇を埋めた人々とハイタッチを繰り返し、写真撮影にも笑顔で応じブラウンは「ファンタスティックな体験だ。ボクたちの競技がこんなに応援を受ける機会はそんなにないからね。3年後の東京きっと素晴らしい大会になるだろう」ご機嫌だった。

 7秒23で2位のウォレスも「せわしなく人が行き交うストリートで走ったのは貴重な経験。パラリンピックをアピールできたと思う」と笑顔。7秒36で走ったシュトレングも「パラスポーツをより多くに人に知ってもらいたい。今日はアスリートとしてのパフォーマンスを十分に発揮できた」と満足そうだった。

 普段は車が行き交う路上に出現した褐色のトラックに約500人が足を止め、世界トップクラスの義足ランナーのレースを見守った。ゲストとして実際にコースを走り、解説役も務めた為末大氏(39)は「コースの両側で、これだけ近くで多くの人が見てくれたのが新鮮でした。東京パラリンピックでは、ぜひ多くの日本選手に活躍してほしい」と、日本のメダルラッシュに期待していた。【小堀泰男】