東京2020大会の後半戦が24日、パラリンピックとして開幕した。開会式のテーマは「WE HAVE WINGS(我々には翼がある)」。空港となった国立競技場のピッチに、選手たちが入場。国旗の周りにプロジェクションマッピングの風が吹く。頭にタケコプターを乗せたキャストに迎えられ、アスリートたちが笑顔で行進する。

エアポートには「片翼の小さな飛行機」。多様な飛行機が飛び立つ中、和合由依さん(13)はなかなか1歩を踏み出せない。大会組織委員会橋本聖子会長とIPCパーソンズ会長のスピーチ、天皇陛下の開会宣言、国枝らによる選手宣誓。そして、祝祭はクライマックスを迎える。

片翼の飛行機の前に光るトラックが表れ、布袋寅泰のギターが泣く。周囲で繰り広げられる色とりどりのパフォーマンスに、和合さんは勇気を与えられる。空港の待合室に座っていた選手たちの手拍子に乗って、大空へ飛び立つ片翼の小さな飛行機。「勇気を出して翼を広げれば、どこにでも行ける」。そのメッセージは、ストレートに届いた。

新型コロナの勢いは、とどまるところを知らない。行きたい場所にも行けず、会いたい人にも会えない。不自由なだけでなく、もっと深い悲しみを抱えた人もいる。それでも勇気を出して前を向き、翼を広げれば飛べる。行きたいところに行くことができる。

盲目のシンガーは美しい歌声を聞かせ、義足のダンサーは魅力的なシルエットを見せた。多様性と調和を求めた演出は、新型コロナ禍の今にもリンクする。ある全盲のパラリンピアンは「コロナで不自由? 僕なんか、生まれてからずっと不自由ですよ」と笑った。こんな状況だからこそ、パラの魅力が一層際立つ。

開会式のテーマがストレートに響くのは、多くの人が「片翼の小さな飛行機」だからかもしれない。日本だけでなく、世界中の人たちが感染症によって大切な翼を失った。それでも、諦めずに残った翼を広げれば大空に飛び出せる。開会式のメッセージは伝わったはず。次は25日からの競技。パラアスリートたちが人間の無限の可能性を見せてくれると思う。【荻島弘一】