東京パラリンピックのシッティングバレーボール1次リーグB組が28日、千葉・幕張メッセで行われ、パラアスリート史上最長身246センチのイラン代表モルテザ・メフルザドセラクジャニ(33)が登場した。ドイツとの初戦に先発出場し、ストレート勝ちに貢献。学校連携観戦プログラムで会場に訪れた小学生からも「お~、すごい、でかい」と歓声や拍手を受け、大きな衝撃を与えた。

コートに座ってプレーしていても、両手を上げれば、シロクマが襲いかかってくるような恐怖さえ感じさせる。最高到達点はアタック196センチ、ブロック194センチ。シッティングバレー特有ルールのサーブブロックを決めると、会場のアナウンスが、思わず「モンスターブロック出ました~」と絶叫。顔の半分以上が115センチのネットを超え、常に相手を“威嚇”する。ネット際のボールを両手で相手コートにたたきつけるなど、両チーム最多18得点。16年リオデジャネイロ五輪金メダルに続く連覇へ好発進した。

幼少期には成長ホルモンの分泌が過剰となる先端巨大症と診断された。16歳の時に自転車事故にあって骨盤がゆがみ、右足の成長が遅れ、今でも左足が約15センチ長い。つえや車いすでの生活となった。一時は精神的にも不安定で、自宅に引きこもり気味だったが、11年に関係者から熱心に誘われ、競技を開始。「シッティングバレーは私の人生に起きた奇跡だ」と転機となった。イランは男女あわせて200以上のクラブチームがあり、競技人口も5000人超。プロリーグもあるシッティングバレー大国だ。取材中のイラン人記者も「彼は国内でも有名で、とても人気。ニックネームはない」と英雄を強調した。

試合後は「大会の最後の試合まで話すことは出来ない」と取材エリアを車いすで通過。だが、「足のサイズは?」の質問には「54・5」と笑顔で答えた。54・5センチかと思ったが、おそらくヨーロッパサイズ。日本サイズでは33・5センチ。超大型ヒーローの、東京での暴れっぷりに注目だ。【鎌田直秀】

◆モルテザ・メフルザドセラクジャニ。1987年9月17日生まれ、イラン・ケラーチャイ出身。代表初試合となった16年リオデジャネイロ五輪で得点ランク2位。決勝では28得点を挙げて金メダル獲得の立役者。身長246センチは現在世界2番目に高いと言われ、パラリンピック史上1位。自転車事故に遭う前の15歳時で身長約190センチ。20年世界選手権でも優勝。