今大会から新競技となったバドミントンで、藤原(ふじはら)大輔(27=ダイハツ工業)が、元世界王者のウクン・ルカエンディ(51=インドネシア)にストレート勝ちする殊勲を挙げた。「相手は51歳の大ベテランの選手。自分が若いころからずっと勝てなくて、背中を追ってきた大先輩。このような素晴らしい舞台で、勝ったというより、お互いベストを尽くして試合が出来たことがうれしく思います」。パラリンピック初勝利で1次リーグ1勝1敗とし、各組上位2位による準決勝進出に望みをつないだ。

第1ゲームを相手にミスに付け込み、11連続得点などで21-5と圧倒した。だが第2ゲームは「言い訳になってしまうが風はコートによって違って後ろのコントロールが出来なかった。同じエラーが出て、どうしようという悩みが出てしまった」と劣勢に。一時は7-11とリードを許す苦しい展開にも、「ファイナルゲームに向けて、出来るだけ相手の体力を削ろうと考えたら、ガチッと気持ちが切り替わった」。前後をうまく使いながら揺さぶってペースを戻すと、9連続得点で1点差に詰め寄り、最後は5連続得点で一気に逆転した。

藤原は生後間もなく、医療事故による感染症で左足を切断し、義足での生活となった。小3時に友人や姉の影響で競技を開始。中、高でも競技を続けて健常者とプレーした。パラ競技に出会ったのは高校2年。筑波大進学後も、バドミントン部で練習してレベルアップしてきた。

車いすへのクラス変更を薦める声もあるが、「自分で決めたこと」と義足を使用しての立位にこだわってきた。「パラリンピックの緊張感はある。スポーツの祭典だなと。自分たちが輝けるために準備してくださったので、義足だったり、僕の気持ちをサポートしてくれた皆さん、ボランティアや運営の方、メディアの方、全員に感謝の気持ちでいっぱいです」。選手村で散髪した爽やかな笑顔は、充実感に満ちていた。【鎌田直秀】