悔しさと、出し切った気持ちがないまぜになり、世界2位の上地結衣(27=三井住友銀行)の涙は止まらなかった。「やりきった。でも負けるのは本当に悔しい」。女王デフロート(オランダ)に挑んだ1戦は、女子とは思えない激しい打ち合いの末、上地は3-6、6-7で敗れ、銀メダルとなった。

両者の1歩も引かない金メダルをかけたバトルだった。ラケットを振り抜き、決してつなごうとしない打ち合いは、「これまでのプレーとは違う形で攻撃したい」という上地の思いの丈だ。女子の車いすテニスのレベルが変わった歴史的な日になった。

男子に比べ、これまでの女子は、腕力や上半身の力が少ないため、どうしてもロブでの戦いが主流だった。そこに、球を強くたたき、順回転をかけ、振り回すスタイルを取り入れたのがデフロートだった。そこに上地が続いた。「いいライバル関係。決勝で戦いたいと思ってやってきた」。

必死でバックの順回転のショットを学び、この日は、そのショットで何度もデフロートを釘付けにした。第2セット3-5から、マッチポイントを6度逃れ、一時は6-5とリードした。「悔やむとすれば、そこで取り切りたかった」。タイブレークにもつれ込み、7本目のマッチポイントで力尽きた。

この日で、2人のテニスのレベルが、一気に抜けた感じだ。「プロスポーツとして、勝敗とともに、見ておもしろいと思ってもらいたい」。銀メダルとなったが、その願いを十分にかなえた試合は、間違いなく金メダル級だった。【吉松忠弘】