【宇都宮ブレックス〈13〉渡邉裕規】「ナベタイム」の原点をたどって~源流編~

渡邉裕規選手(35)がつくり出す「ナベタイム」はブレックスファンにとって心躍る時間だ。高校時代の恩師、世田谷学園高校の伊藤恒先生への取材から、渡邉選手が「ゲームの流れを変え、空気を一変させる」力を高校時代には身に着けていたことがわかった。さらにその源流をたどってみたくなり、多摩川を越え、渡邉選手が生まれ育った川崎市を訪れた。(子供時代のお写真は渡邉選手からご提供いただきました)

バスケットボール

「ルーズボールに負けない」

溝の口(JRは武蔵溝ノ口)駅は一大ターミナルだ。東急田園都市線では多摩川を越えて最初の急行停車駅であり、並走する大井町線はここで始発、終着となる。交差するJR南武線の駅と東急側をつなぐ2階のペデストリアンデッキでは、家路を急ぐ人たちがせわしなく行き交っていた。

夕暮れ時の駅前。ノクティプラザという商業ビルの壁に映し出された、ブレイブサンダースとフロンターレを応援するデジタルサイネージがまばゆい。ここが「川崎」であることを強く実感させてくれる。

南武線沿いに南に歩いていくと、10分ほどで川崎市立久本小学校に着いた。照明のついた校庭ではサッカースクールが開講中だった。校舎を挟んで、校庭と反対側に体育館がある。30センチほど開いた入り口の隙間から、男の子と女の子合わせて40人近い子供たちが、一斉にランニングをしている姿が目に入った。

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1988年入社。プロ野球を中心に取材し、東京時代の日本ハム、最後の横浜大洋(現DeNA)、長嶋巨人を担当。今年4月、20年ぶりに現場記者に戻り、野球に限らず幅広く取材中。