150秒にかける青春〈18〉〝負け〟から学んだこと…西日本代表涙の3位、19人の最後の演技
チアリーディング世界選手権大会(群馬・高崎アリーナ)で、選抜日本代表チーム・西日本は涙の3位に終わった。夏のジャパンカップで4連覇した箕面自由学園の高校生を中心に編成。世界一を目標に掲げながら前半のスタンツでミスが出た。“敗戦”を糧にして再出発する彼女たちの思いに迫った。(敬称略)
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〈チア世界選手権連載・完 西日本代表編〉
- 〈1〉日本一38度のチア部 笑顔と涙、常勝への道
- 〈2〉水飲むふりして涙を隠す…笑顔貫ける強さ
- 〈3〉いざ決戦、ジャパンカップ
- 〈4〉動画:決戦直前希少映像&緊張のち歓喜の演技
- 〈5〉動画:「日本一」の練習風景
- 〈6〉メンバー外の部員が起こした奇跡
- 〈7〉中学編上:“妹”も受け継ぐ勝者の精神
- 〈8〉中学編下:V剥奪騒動、ボイコット…成長の階段
- 〈9〉「応援したい…」原点に触れ世界へ向かう秋
- 〈10〉帝京大チア、情熱の指導者と歩んだ悲願への奇軌
- 〈11〉ナショナルチーム西日本、高校生を中心に目指す世界一
- 〈12〉1400人が涙した GOLDEN BEARS優勝報告会
- 〈13〉コロナで閉ざされた千葉明徳の夢…世界選手権でつながった希望
- 〈14〉帝京大、大学女王から世界の女王へ
- 〈15〉世界一のチア!帝京大学が3冠達成
- 〈16〉スモールグループス男女混成 選手5人とコーチの物語
- 〈17〉寄せ集めのチームが1つになった瞬間…東日本代表
- 〈18〉〝負け〟から学んだこと…西日本代表涙の3位
止まることのない涙
表彰式が終わり、会場からJR高崎駅へと続く道を並んで歩く。
すっかり日が沈んだ、暗い道だった。
対向車線を走る車のライトが彼女の頬を照らした。
ふと見ると、光るものがあった。
「結果はいいんですよ。
チアをやっていたら、こういう時もあるから。
優勝以外は一緒やし。
だから、もう、気にしていないです」
西日本代表チームを率いたコーチの井上綾香は、そう話していた。
それは本心ではなく、自分を納得させるために強がりな言葉を並べていることは、すぐに分かった。
車のライトなのか、月明かりなのか。光に照らされる度に、目頭が光っていたから。
本格的な冬の到来を感じさせる冷たい風が、吹いていた。
〝負け〟からはい上がろう!
大会が終わった5日後-。
その日は午前中に練習を終え、午後からは学期末テストに向けた自主学習の時間だった。
少しは気持ちが落ち着いただろうか。
みんなが机を並べて勉強をしているところを訪ねた。
11月から箕面自由学園高校の新主将になった高山智子に、勉強の合間に時間をもらった。
ホールの壇上へと架かる階段に座り、3位に終わった大会のことを聞くと突然、しくしくと泣き出した。
「悔しくて、悔しくて…。
今までこんなに悔しい体験をしたことがなくて…」
肩を震わせ、ずっと泣いていた。
12月に入り、2週間ぶりに会った井上もまた涙を流した。
そして、選手に復帰し、27歳で3度目の世界選手権に挑んだ井川恵莉奈に声をかけると、彼女も目を潤ませた。
この悔しさは消えることはない。
ただ、その「痛み」は、いつか、次へと成長する力に変わる時が来る。
今まで、ほとんど負けることを知らなかった彼女たちが、経験した苦しみ。
それを生かせるかどうかは、自分たち次第。
きっと、ドラマの主人公は負けからはい上がる。
この物語はまだドラマの始まり。
プロローグ-。
【シニア女子部門・上位成績】
1 大学代表・帝京大学(273・0点)
2 選抜日本代表・東日本(256・5点)
3 選抜日本代表・西日本(250・5点)
4 ドイツ(164・0点)
5 インドネシア(131・0点)
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茨城県日立市生まれ。京都産業大から2000年大阪本社に入社。
3年間の整理部(内勤)生活を経て2003年にプロ野球阪神タイガース担当。記者1年目で星野阪神の18年ぶりリーグ制覇の現場に居合わせた。
2004年からサッカーとラグビーを担当。サッカーの日本代表担当として本田圭佑、香川真司、大久保嘉人らを長く追いかけ、W杯は2010年南アフリカ大会、2014年ブラジル大会、ラグビーW杯はカーワンジャパンの2011年ニュージーランド大会を現地で取材。2017年からゴルフ担当で渋野日向子、河本結と力(りき)の姉弟はアマチュアの頃から取材した。2019年末から報道部デスク。
大久保嘉人氏の自伝「情熱を貫く」(朝日新聞出版)を編集協力、著書に「伏見工業伝説」(文芸春秋)がある。
