冨安は別格だ。前半11分にゴール前でクリアしたプレーが印象的だったが、私はその2分前のシーンで、大きな可能性を感じた。右からのクロスへの対応。ラインを上げて相手FWをオフサイドの位置に置きながら、ボールが上がった瞬間、体をぶつけて相手の自由を奪った。ラインを上げて中盤のスペースを消し、GKシュミットに飛び出す空間を作ってあげ、難なくキャッチで終わらせた。

今の選手はきれいなプレーを好む。正しいポジショニングで味方と連動して防ぐことを第一に考える。しかし実際、試合では想定外のことが起こるし、失点につながる。見えないところでの駆け引き、体の接触は、世界との戦いでは欠かせない。過去に闘莉王、中沢、井原さんらは世界との戦いを重ねて身につけた。だから「DFは経験が大事」とよく言われる。しかし20歳の冨安は、すでにそのプレーができているから、素晴らしい。(日刊スポーツ評論家)