8月はヨーロッパの各国で新シーズンが開幕する時期です。

15日は終戦の日。第2次世界大戦がスポーツ界に及ぼした影響は本当に大きく、今回はオリンピックを中心にスポーツとの関わりを振り返ってみたいと思います。

1964年10月10日、東京でアジア初となった第18回オリンピックが開幕。この大会は、戦後の日本のめざましい復興・発展を世界にアピールする絶好の機会になりました。これをさかのぼること24年前の昭和15年(1940年)9月にも東京(当時は東京都ではなく東京市)でのオリンピックの開催計画がありました。故に「幻の東京オリンピック」と呼ばれたりもしています。日本が開催地として可決され準備もしてきましたが、1937年に起きた日中戦争をきっかけに開催は白紙に。ヘルシンキでの開催に変更したものの、結果的にはそのオリンピックも第2次世界大戦の勃発によって実現しませんでした。

1980年のモスクワ大会では、当時のソ連のアフガニスタン侵攻に反発し、米国を中心に英・仏・西独・伊などが不参加となるという、国際政治の対立がスポーツにもち込まれた形になりました。続いて行われた84年のロサンゼルス大会では、前大会の報復で(名目的には83年のアメリカのグレナダ侵攻に抗議)ソ連及び東欧諸国が参加をボイコット。スポーツが東西対立のツールとされた“「新冷戦」時代の愚行“と全世界的に報道されたと言います。この時、実はスポーツ大国であった東ドイツは参加を熱望していたこともあり、これがきっかけで隣国ソ連と東欧諸国に亀裂が入る一因となったとも言われております。

88年のソウル大会ではソ連として参加した最後の大会。92年のバルセロナ大会からは、冷戦終結を受けてオリンピックの政治利用は影を潜めた形となり、今となっては政治的な要素が入る余地は全くありません。

この第2次世界大戦がスポーツ界に及ぼした影響はこれだけでは終わりません。実は、フットボールの放映権にも大きな影響しておりました。なんと言ってもイングランド・プレミアリーグの放映権料金が大きな額で知られており、21-22シーズンのデータにはなりますが、その権料収入の総額は3億ユーロ(約480億円) 。ラ・リーガで1億6711万ユーロ(約267億円) 、ブンデスリーガは1億6341万ユーロ(約261億円) 。セリエAで1億1260万ユーロ(約180億円)、リーグ・アンは8355万ユーロ(約134億円)。歴史的には第2次世界大戦で大英帝国連合軍が勝利したこともあり、アジア諸国はほとんどが連合国軍のものとなりました。世界的に英語圏が拡大。これが今になってプレミアリーグの放映権販売に多大なる影響を及ぼしたとされています。ドイツはイタリア、日本と共に敗戦国ですから、当然世界的に植民地の数は圧倒的に少ない現状です。つまり、植民地が少ないことにより、言葉や文化的な影響を及ぼしている国の数が少なく、結果的に放映権の売り先が少ないということになります。スペインは私も留学するまであまり気が付いておりませんでしたが、第2次世界大戦にそもそも参加していません(内戦の為、ヒトラーの誘いを断ったとされています)。故にアジア・アフリカでスペイン語が通じる国々は少なく、ドイツ語も同じです。フランスは連合国側として戦争に勝ったにも関わらず、植民地はアフリカに多く、資源はあるがお金が少ない国が多いために放映権が売れていないと言われています。

歴史的な背景でいけば、英国はオイルマネーで溢れている中東を抑えていたことも、今とはなっては非常に大きな事象といえます。今シーズンからプレミアリーグはインドやアジア向けの放映権契約が新たに結ばれたこともあり、大きく売り上げ数字を伸ばしておりますが、インドと英国は東インド貿易会社という歴史的な企業が存在したように、400年以上の歴史があります。当然英国の文化が深く根付いていることには間違いありません。

コンテンツそのものの魅力ももちろんあります。Jリーグは特に放映権が海外諸国に売れていないとも言われており、ここが成長していかないとJリーグそのものの収入は抜本的に増加していかないとされます。この部分をどうやって伸ばしていくのかが今後のJリーグの発展に大きく寄与することは間違いなさそうです。

歴史がスポーツビジネスの現場に多大なる影響を及ぼしているケースもあります。平和でこそのスポーツイベントであることを改めて感じる季節でもあります。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)