今回は久保建英選手が所属するレアル・ソシエダードです。スペイン北部にあるバスク州サン・セバスティアンにあるチームで、チーム名を直訳すると「王室公認」という意味合いがあります。王室公認サッカークラブというチームです。歴史を見てみると、1900年代の初期にイギリスから帰国した学生や労働者によって、スペインにサッカーが持ち込まれたと言われているようです(様々な説あり)が、チームの設立は1903年。確認できる部分では1905年のコパ・デル・レイ(スペインの天皇杯に該当)に参加したという記録があるようです。なぜこのあたりが曖昧なのかというと、長きにわたる内戦で資料が失われ、はっきりしたものが残っていないという状況のようです。その後1928年にリーガ・エスパニョーラが創設されたのですが、まさに発足10クラブの1つでもあり、初年度の成績は4位だったようです。1966-67シーズン以降は1部に定着しており、1970年代が全盛期。79-80シーズンには32試合連続無敗のリーグ記録を樹立するなど躍動し、レアル・マドリードやバルセロナを抑えて優勝しました。強豪チームへと成り上がりましたが選手が引退して入れ替わると同時に下降線をたどり2006-07シーズンには40年ぶりに2部降格。さらに借金が膨らみ破産までも。なんとか4シーズンかけて若手中心にチームを立て直すことに成功し10-11シーズンから1部復帰、とこのような歴史を持つ古豪なのです。バスク出身者で構成されていた過去もありますが、これは1990年ごろまでの話で、対抗馬アスレティック・ビルバオとは対象に、様々な国籍の選手で構成されています。
そのレアル・ソシエダードですが、昨シーズンの純粋な売り上げは約1億1311万ユーロということですので、1ユーロ=150円計算で約170億円前後となります。構成をみると、特徴的なのはソシオと呼ばれるファン会員による会費売り上げが20億円ほど計上されており、地元のファンの結びつきが強いことがわかります。スポンサー収入は7億円ほど。やはりテレビ放映権のリーグによる分配金が110億円ほどということでここが一番大きな割合を占めてはおります。一方で支出面をみると、チーム人件費は約9200万ユーロということで日本円にすると約140億円前後。その他は運営費などという形になるので、人件費率が80%近くとなります。
日本のJリーグを見てみると、J1クラブでスポンサー収入7億円というクラブはありません。昨年度の収支を見てもほとんどのクラブが15億円を超えており、単純に比較することはできませんが、日本のクラブの営業体制は素晴らしいものです。
一方で人件比率をみると日本のクラブで人件費比率80%というクラブはありません。多くても50%ほどですので、この部分の予算分配は違いがあります。スペインではサラリーキャップが敷かれており、売り上げ・総収入に対して厳しく比率が決められており、おそらくですがレアル・ソシエダードはその上限ギリギリの人件費計上ということが推測されます。でもこれは欧州チャンピオンズリーグ(CL)参加が決まっており、更なる収入が確実になっていることを見越してのこと。このCLの成績次第で来シーズン以降の更なるクラブの発展となり得るのか、このあたりは注視して行きたいところでもあります。クラブの収支面・運営面からしてもCL出場は非常に大きく、ようやく手にすることができた絶好の機会。その活躍度には注目です。
【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)