フジテレビが02年日韓大会以来、16年ぶりに日本戦の放送を手にした。02年には編成部長だった亀山千広氏(現BSフジ社長)が視聴率66・1%を記録した日本の1次リーグ第2戦ロシアを引き、神の手ならぬ「亀の手」と話題になったが、今回は立本浩之編成部長が“森高千里パワー”で、日本の第3戦ポーランド(6月28日、午後11時)を引き当てた。

 フジテレビは編成部長がくじを引くことが慣例で、立本氏もその大役を担うことになった。他局では日本戦を引くために滝修行などの「験担ぎ」の努力をしていることも知っていたが、立本氏はあえて験担ぎは考えていなかったという。

 だが抽選2日前の昨年12月13日、「FNS歌謡祭」の現場に出向いた際に思わぬ「福」を得た。立本氏は大学時代にドラマーとしてバンド活動に励んだこともあり、歌とドラムで音楽界をけん引する森高千里に尊敬の念を抱いていた。その気持ちを知る番組の大御所プロデューサーが、司会を務めた森高との2ショット写真を撮る機会を与えてくれた。その撮影で森高が立本氏の右肩に手を添えた。

 くしくも昨秋のプロ野球ドラフト会議、日本ハムの木田優夫GM補佐が明石家さんまの助言を聞き、左手でくじを引き清宮幸太郎内野手の交渉権を獲得している。それにイメージを重ねた立本氏は「右と左、どっちで引こうか迷っていた。これで右手にすぐに決めました」。抽選で立本氏は右手で一番最初に触ったくじをそのまま取り出した。

 「優先順位・2番」。民放に割り当てられる日本戦は2試合。2番以上なら日本戦中継権の獲得が自動的に決まる。「本当は1番を引きたかったので、一瞬ガッカリしてしまった」と振り返ったが、森高からもらった「運」でポーランド戦をゲットした。会社に戻ると、編成のスタッフが拍手で迎えてくれた。立本氏は森高の所属事務所にポーランド戦を引いたことを報告し、感謝の意を伝えた。

 フジは、日本戦以外は午後9時の試合を4試合中継する。ゴールデン帯(午後7時~同10時)の放送は民放で最多だ。立本氏は「深夜キックオフの試合も多いが、ワールドカップを中継するからには全体を盛り上げたい。ゴールデンタイムの時間帯にテレビをつけるとフジが放送している、という定着を目指したい」と話す。

 かつて「フジがサッカー中継すると日本代表は負けない」という不敗神話を誇った。日本が初のW杯出場を決めた97年11月の「ジョホールバルの歓喜」もフジの放送だった。「サッカーのフジテレビ」の力をロシア大会で発揮する時が来た。【岩田千代巳】