Jリーグのキャリア・デザイン・サポートプログラム『Jリーグ版よのなか科』が始まって、今年で8年目を迎えました。J1清水エスパルスでは、2011年から協働事業としてスタート。最初のプログラムを受けた清水ジュニアユース、同ユース出身のDF立田悠悟(19)が今年、プロ選手としてトップチーム加入を果たしました。

 清水では、中1を対象に全5回のプログラムを実施しています。練習前や後、さらには週末を使って行われます。保護者も一緒に受けられます。テーマは、クラブのビジネスについて、サッカーに関わる職業など。プロ選手を目指す上で大切なキャリアや、社会人として重要な仕事への取り組みを考える機会となります。さらにプログラムを通じて、自分のキャリアイメージを明らかにし、考える力などの育成も担っています。

 1回目の授業では、クラブの収支について説明を受けます。クラブが、下部組織の育成のために多額の支出をしていることをはっきり伝え、責任感や使命感を持ってもらいます。立田は当時を振り返り「クラブのお金の動きを知って、とても驚きました。Jクラブの下部組織に入らなければ知らなかったと思う」と話していました。

 選手同士で、ディベート(討論)することもあります。「サッカー選手は、サッカーだけしていればいいのか」というテーマで、各自が意見を発表。立田は「サッカー選手は、サッカーだけをしているものだと思いこんでいた」そうです。しかし授業を通じ、「地域への貢献をすることが大事なんだ」ということに気付いたと言います。今はイベントへの出席や、ファンサポーターとの触れ合いを大切にしています。「自分は静岡出身なので、地元の選手が積極的にイベントに出ることで、さらにエスパルスを知ってもらって、それに貢献できたらいいなと思っています」。

 小学生の頃には、清水の現役選手が学校を訪れ、交流する機会があったそうです。さらに、現役を引退した直後のクラブOB久保山由清氏(41)、羽田敬介氏(39)の特別授業も受けた経験があります。この2人は現在、トップチームのコーチ。そして立田は、プロ選手として母校の小学校を訪問する側になりました。「今は『見られる』立場になったんだなと思います。子どもに、なりたいなと思ってもらえるようなサッカー選手を目指します」。

 立田は身長189センチの高さを武器に、空中戦に強いセンターバックです。最近はサイドバックにも挑戦中で、今季はルヴァン杯予選リーグで3試合に先発。リーグ戦でもベンチ入りを経験するなど、着実にステップアップしています。地元への思いを胸に、オレンジの伝統を引き継いでいってほしいと思います。


 ◆保坂恭子(ほさか・のりこ)1987年(昭62)6月23日、山梨県生まれ。埼玉県育ち。10年入社。サッカーや五輪スポーツ取材を経て、15年5月から静岡支局に異動。今年はJ1清水とJ3藤枝の担当。清水名物「黒はんぺん」は、フライがおすすめです。