アルビレックス新潟のJ2降格が決まった。04年から14年間守ったJ1の座を去る。

 クラブワーストの6連敗、三浦文丈前監督(47)から呂比須ワグナー監督(48)へのシーズン途中の指揮官交代、外国人選手の契約解除と途中帰国…。降格クラブならではのマイナス案件が重なった。

 そんな中、掘り出しもの的な収穫だったのはFW河田篤秀(25)だ。今季、シンガポールリーグの新潟シンガポールから移籍し、Jリーグデビューを果たした「逆輸入」。第32節を終えて9試合出場3得点で、第28節神戸戦からは4-2-3-1のワントップでスタメンに定着した。

 Jデビューの年に降格の屈辱を味わった。ただ、河田には喪失感よりも手応えの方が大きかったはず。「とにかくシュートを打つ。自分がゴールを奪って勝つという僕の目標と、チームの目標が一致していますから」。新潟は29節G大阪戦から3勝1敗と負けなし。降格は決まったものの、チーム状態はいい。河田はG大阪戦で初のフル出場、続く磐田戦では1得点と、貢献している。

 最優先するのはチームの勝利。その上で河田は個人的な結果や手応えを「試合で勝てなかったから意味がない」とはとらえない。「1試合ごとに良くなっている感じはしている」。研ぎ澄まされてきた感覚を大切にし、次につなげてきた。

 大阪・和泉市の石尾中ではC大阪U-15に所属し、その後は阪南大付高、阪南大。大学卒業後、選んだ先は新潟シンガポール。Jクラブからのオファーはなかった。そのシンガポールリーグには15、16年に在籍し通算43試合出場19得点。昨季は最優秀選手に選出された。

 「シンガポールでは、ここで結果出すまでは、と思ってやっていた。はい上がろうという気持ちしかなかった」。日の当たる道を歩いてきたわけではない。自分に必要なものをつかもうと、必死になった時期があるから、得られたものを素直にプラスに吸収できる。

 下を向くことなく、1試合1試合の手応えを求め続けてきた。そのメンタルは1年でのJ1復帰を目指す新潟の土台になる。【斎藤慎一郎】

 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)生まれ、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。新潟はJ2時代から取材。サッカー以外にはBリーグ、Wリーグのバスケット、高校スポーツなど担当。