名古屋グランパスの元ブラジル代表FWジョー(30)を取材するため、11日のJ1第3節・湘南ベルマーレ戦(BMWス)に足を運んだ。名古屋が今季、関東で公式戦を戦うのは初めてで、ジョーの関東初見参を押さえるためか、名古屋側に複数台のテレビカメラがベタ付きでマークしていた。

 試合前の練習から、ジョーの動きに目を奪われ、ノートに走らせるペンが止まらなかった。パス交換の際、ボールを足のインサイドで止め、キックする様子を見ていたが、蹴ったパスがブレたり浮いたりすることは皆無だった。

 ボールを止める際は、相手の蹴ったボールの高さ、スピード、弾道に応じて、足のインサイドの位置を微妙にずらして受けていた。ボールに勢いがあったり、地面に当たって跳ね返ったりした際は、ボールの力を受け流すためだろうが、足のインサイドを若干、引いて受けていた。何本も見ていたが、おそらく引いていたのは1、2センチくらいだろうが、勢いがあったボールはクッションに当たったように足に収まった。

 準決勝でドイツに1-7で大敗したとはいえ、14年のワールドカップでブラジル代表の一員に名を連ねた選手であり、うまいのは当たり前だろうと言われるかもしれないが、最も基本と言われる技術が、あれだけ正確に出来る選手は、周囲にはいなかった。192センチ、97キロと長身で大柄だが、足裁きも細やかで、とにかく足元、特に足首が非常に柔らかかった。

 試合が始まると、ジョーは前線でボールを待ち受ける体勢を取っていた。それほど動きは多くないが、周囲の様子を見守り、MF青木亮太や和泉竜司らが、相手MFとDFの間のバイタルエリアまでボールを持ち込むなど得点のチャンスが見えた瞬間、一気に相手ペナルティーエリア内に進入。0から100へ、一気にスピードを上げて攻撃に向かう姿勢に、点取り屋のにおいを感じた。

 前半9分、味方からの縦パスを受けると、ペナルティーエリア外からシュート。DFに弾かれると右拳を振って悔しがった。同23分にはペナルティーエリアの外から再び思い切ってシュートを打ったが、GK秋元陽太に防がれた。後半19分にはMF八反田康平の右クロスに飛び込んだが決定機を決めきれなかった。

 周囲との連携は、まだまだ構築中の様子だ。試合後「まだ開幕から3試合目。チームメートが僕の動きで、たくさんの分からない部分が出てくるのは当然だと思う。そこを練習に生かして、自分がどういう動きをするか、試合中にどういうランニングをするかをみんなに伝えることが出来れば、試合にもつながる」と語った。湘南戦でも、縦パスを出すよう要求してペナルティーエリア内に入ったが、パスが自分の要求より長く、GK秋元陽太に取られ、距離の長短を身ぶり手ぶりで指し示す場面があった。一方、青木との連携には手応えを感じている様子で「青木とのコンビが1こ出て惜しいシーンだったのですが。いろいろな動きを作ってみないと」と語った。

 ポストプレーに関しては、オーストラリア代表GKミッチェル・ランゲラックのゴールキックは、確実に自分の元に収めるなり、ヘッドで味方に落とすなりしようという姿勢は見えた。またランゲラックも、ジョーがやや左に動けば左に、などジョーを目がけて正確に蹴っており意思疎通、連携は出来ている印象だ。

 ただ、ジョー自身「何回か言っているが、体調が100%ではない」と語るように、後半は一気に疲れ、動きが目に見えて落ちた。対戦した湘南DF山根視来も「今日は、あまり良いプレーをしていませんでした」と振り返った。その上で「ボールに関与せず、クロスを待っている時もやる気がないような感じでスーッと歩いているんですけど、一瞬でグッと入ってくる怖さがある。多分、最後に1点、取るか取らないか…そこだけ、常に狙っている」と分析した。

 練習から見ても、技術の高さは明らかだ。得点機の一瞬のすごみ、輝きを見ても、プレミアリーグのマンチェスター・シティーやエバートン、日本代表DF長友佑都がプレーするトルコの名門ガラタサライなど、世界的に知られるクラブを渡り歩いた点取り屋だと感じる。一方で、まだまだコンディションが整っておらず、動きは緩慢に見え、後半は別人のように動きが落ちた。「連戦の中で出続ければコンディションは良くなると思うし、100%に近くなると思う。Jリーグは強いチームがたくさんあるリーグ。少しでもなじむことが出来たら、もっと試合の流れが良くなる」というジョー自身の言葉を信じ、日本のサッカーファンには1度、スタジアムで生のジョーを見ることをお勧めしたい。【村上幸将】