ハリルホジッチ氏は、何を伝えたいのか? 日本サッカー協会から一方的に代表監督を解雇され、その怒りをぶちまけたいのか、それとも不当解雇を訴えたいのか。いずれにしても、27日に都内で開く記者会見は温厚なムードではないのは、想像できる。

バヒド・ハリルホジッチ氏(左)のコメントを涙をこらえながら通訳する樋渡群氏(2018年4月21日撮影)
バヒド・ハリルホジッチ氏(左)のコメントを涙をこらえながら通訳する樋渡群氏(2018年4月21日撮影)

 日本協会とハリルホジッチ氏との契約は、ワールドカップ(W杯)ロシア大会終了後の8月末までとみられる。田嶋幸三会長は、7日にパリで同氏と会って解雇を言い渡し、理由として「選手とのコミュニケーション不足」などを挙げた。トラブル続きだった選手と監督の溝を埋める努力をせず、最も楽な方法を選択した。

 ハリルホジッチ氏は、日本代表監督を務めた3年間で、10億円近いジャパンマネーを得たはず。高額年俸者は、それだけリスクも大きい。雇い主が「首」と言って、契約満了日までの年俸も払うと言っているわけだから、文句は言えない。自分の首を守りたかったのなら、もっと成績を残さないといけなかった。

 実は、在任中に監督交代の意見は複数回あった。その中でも大きな「危機」は2回。W杯最終予選のオーストラリア戦(昨年8月31日)、さらに同12月の東アジアE-1選手権で韓国に1-4で惨敗した後だ。オーストラリア戦では、2-0で勝ってW杯出場を決めたため、危機を脱した。韓国戦惨敗後は、一部幹部の反対と、欧州組が入ったフルメンバーではなかったことなどが考慮された。

サッカー東アジアE-1選手権 韓国戦後の会見後、疲れた表情を見せる日本バヒド・ハリルホジッチ監督(2017年12月16日撮影)
サッカー東アジアE-1選手権 韓国戦後の会見後、疲れた表情を見せる日本バヒド・ハリルホジッチ監督(2017年12月16日撮影)

 監督と選手間の不協和音が聞こえたのは、1年以上前からだ。日本協会は早い段階で把握はしていたが、リスクを冒したくなかった。技術委員長の西野朗氏は、指揮官と選手の間を取り持つことができなかった。監督から不満を聞き、選手の不満も聞いたが、両者の意見をまとめて折衷案を出すこともできず、まるで伝書バトのように、その事実を田嶋会長に伝えるだけだった。

 監督交代で日本代表を率いることになった西野監督は、つなぐサッカーをベースにチームを構築するとみられる。ザッケローニ体制と似たようなサッカーで、日本人にはなじみやすい。球際の激しい攻防をベースに、堅守速攻をモットーとしたハリルホジッチとはチームコンセプトが違う。

会見に臨む西野朗新監督。左は田嶋幸三会長(2018年4月12日撮影)
会見に臨む西野朗新監督。左は田嶋幸三会長(2018年4月12日撮影)

 では、W杯ブラジル大会終了後、約4年間、日本には何が残ったのだろうか。アギーレ監督も含め、10億円以上の出費に加え、4年という貴重な時間が無駄となるのではないだろうか。世代交代もうまく進まず、4年前の主力が4歳、年を取っただけ。

 ハリルホジッチ氏に言いたい。27日の会見では、不満をぶちまけるだけでなく、3年間、自分が日本に何を残したかを明確に言ってほしい。日本に足りない部分、優れているポイントをはっきり伝えてほしい。職務怠慢としか思えない日本協会も、失われた3年間を、きちんと検証し、責任のありかを含め、今後の強化方針を明確にしてほしい。【盧載鎭】

 ◆盧載鎭(ノ・ゼジン)1968年9月8日、ソウル生まれ。88年に来日し、96年入社。加茂ジャパンから約20年間、サッカーを担当し、2年間は相撲担当。5月31日のW杯メンバー発表が楽しみな2児のパパ。