「強いアルビを取り戻さなければ」。こう言ったのはJ2アルビレックス新潟のMF小川佳純(33)だ。

 11日の天皇杯3回戦・東京戦、新潟は1-3で敗れた。このときの観客は2315人。平日のナイトゲームとはいえ、お寒い状況だった。

 小川はこの試合、スタメンで64分間プレーした。左大腿(だいたい)部を負傷し、公式戦のスタメンは約2カ月ぶり。ウオーミングアップでピッチに入る前、最初に目に入ったのが、閑散とした観客席だった。

 「さびしいというか。応援しがいのないチームになってしまったのかな、と」。新潟は第24節までで、ホーム戦は1勝しかしていない。順位も17位と、J1自動昇格の2位以内はもちろん、昇格プレーオフに進出する6位以内からも遠ざかっている。

 小川は開幕直後から故障離脱と復帰を繰り返した。自身が不在のピッチで、不完全燃焼な試合が続く様にもどかしさが募った。ごまかしながら出場する選択もあったが、不安のない状態になるまで治療に専念した。戦列に戻ったのは、J1復帰に待ったなしのところまで追い詰められてからになった。

 昨季途中、サガン鳥栖から期限付き移籍。今季は完全移籍で新潟の一員になった。昨季J2降格が決まったホームのヴァンフォーレ甲府戦後、選手がピッチを引き揚げても、コールを続けるサポーターに胸を打たれた。そして完全移籍を決意した。

 名古屋グランパス時代から新潟とは何度も対戦した。当時のアウェー新潟戦、しぶとい試合ぶりと、それを後押しするサポーターの一体感を肌で感じた。敵に回せば脅威だが、味方につければ心強い。今は、味方にする環境にいる。

 だからこそ、「サポーターに恩返しするために勝たなければ」。敵として戦った当時の「強い新潟」。それを取り戻すことが、新潟サポーターを背にした今の仕事。小川の決意が結実するか、どう形に表れるか。夏場が新潟のヤマ場になる。【斎藤慎一郎】


 ◆斎藤慎一郎(さいとう・しんいちろう)1967年(昭42)生まれ、新潟県出身。15年9月から新潟版を担当。サッカー以外にはバスケットのBリーグ、Wリーグの高校スポーツなどを担当する。