J2横浜FCのクラブ創設20周年記念マッチが、ホーム讃岐戦の前座試合として行われた。奥寺康彦氏、リトバルスキー氏ら横浜FCのOBを中心とした「横浜FCレジェンド」と、歌手GAKU-MC、俳優勝村政信らサッカー愛好家が集う「横浜FCフレンズ」との対戦。試合は3-3の引き分けで終わったが、驚いたのは「横浜FCフレンズ」のメンバーのうまさだ。GAKU-MCは鋭いドリブル突破で左サイドを制圧。そして、目を引いたのが、日本テレビのラルフ鈴木アナウンサー(44)だった。

 鈴木アナには申し訳ないが、サッカーの実況はプロだが、プレーはアマチュアだと勝手に思いこんでいた(勉強不足ですみません)。しかし! ボールタッチの柔らかさ、トラップがスムーズでアマのレベルではない。スピードに乗ってエリア内に切れ込み、鋭い切り返しでDFの逆を取る動きを見せた。単なる「同好会レベル」ではないことは一目瞭然で、カメラマンも「ラルフアナ、めっちゃうまかったですね…」と感心していたほどだ。

 試合後、鈴木アナと話し、その謎が解けた。鈴木アナは航空会社に勤める父の海外赴任で、小学校から高校までドイツ、オーストリアに住み、高校時代はオーストリア1部ラピッド・ウィーンの下部組織でプレーしていた。同クラブは国内リーグで3度の優勝を誇る強豪。欧州で鍛え上げられたセミプロだったのである。現役時代は、足首の靱帯損傷などけがが多くプロの夢を断念し、大学に進学。そしてアナウンサーとして、サッカーの最高峰のW杯の舞台に立った。今でもサッカーは週2回、仲間と練習しているという。

 実は、川崎フロンターレにも成長著しい「ラルフ」がいる。今季、J2山形から加入した鈴木雄斗(24)だ。川崎FにはDF武岡優斗(32)も在籍し「ユウト」が2人になったため、DF登里享平(27)が「鈴木だからラルフ」と、ラルフ鈴木アナから鈴木雄斗の愛称を命名。今では「ラルフ」の愛称がチーム内外に浸透し、鬼木達監督も試合後のインタビューなどで、鈴木のことを「ラルフ」と呼んでいる。ちなみに鈴木アナは、DAZNの鬼木監督の試合後のインタビューで「ラルフ(=鈴木雄斗)」という言葉が出たとき、ドキッとしたそうだ。

 川崎Fのラルフは第14節の柏戦で途中出場でJ1デビューを果たし1得点。その得点が逆転弾で、チームを救った。ダイナミックなプレースタイルが光り、以降、途中出場ではあるがコンスタントに試合に出続けている。前年王者のチームで、ベンチ入りするのも容易ではない中、着実に技術を伸ばしており、素材としても将来の日本代表に名を連ねる可能性はある。日本代表の現場で、ラルフ鈴木アナが、川崎Fのラルフをインタビューする“共演”が実現するかもしれない。


 ◆岩田千代巳(いわた・ちよみ) 1972年(昭47)、名古屋市生まれ。95年入社。主に文化社会部で芸能、音楽を担当。11年11月、静岡支局に異動し初のスポーツの現場に。13年1月から(当時)J1磐田を担当。15年5月、スポーツ部に異動し主に川崎F、湘南担当。