悪質なSNS投稿を受けていたアビスパ福岡DF奈良竜樹(29)が、10月8日の北海道コンサドーレ札幌戦で約1カ月ぶりに先発復帰、3試合ぶりのフル出場を果たした。

試合は2-1の逆転勝ち。最近、守備崩壊が止まらない福岡にとっては喜ばしいことだった。

札幌戦は、基本3バックの右を務め、守備時には5人が並ぶDFラインを統率した。奈良は「チームが絶対に勝利をしなければいけないという状況の中で、もちろん課題はいくつもあったとは思うが、いまはやはり結果が大事。そうした中で逆転できたことは大きいと思う」と死力を尽くした。

長谷部茂利監督(51)は奈良について「状態が整ったということで出場しました。出来も良かったと思います。長所を出し、勝利に貢献してくれました」と、チームに欠かせない戦力の復帰を喜んだ。そして、良い時に戻りつつある強みの堅守速攻に手応えを感じてもいた。

10試合連続の先制点献上はいただけないが、逆転勝利に貢献した。自動降格圏17位清水エスパルスと勝ち点差2の15位で、熾烈(しれつ)な残留争いも残り2試合。闘志あふれるプレーが持ち味の奈良が、一気にピンチから抜けだすカンフル剤になることを願う。

長谷部監督は4日、練習に参加して通常メニューをこなしているものの、ベンチ外が続いていた奈良について言及していた。

「常にコミュニケーションは取っている。やれるという準備が整った時に試合に出るべきだと思う。いろいろと報道されていましたが、いろいろと大変な面があった。練習はしているので、どこかで整った時に、いつでも帰って来ることを期待している」と説明。札幌戦出場は微妙な状況ではあった。

奈良は、9月10日横浜F・マリノス戦でFW西村拓真(26)の左足を負傷させた。そのプレーがSNSで物議を醸して、奈良を中傷する投稿が散見された。これを受けて、クラブは9月11日に「法的措置などを視野に入れ厳正に対処して参ります」との声明を出していた。

だが、福岡の降格危機にあって、黙って見てはいられなかったのだろう。気持ちの整理が難しい中で、プレーに集中する奈良の姿には感心させられた。残り2戦も、おとこ気でチームのピンチを救ってくれるに違いない。【菊川光一】

◆菊川光一(きくかわ・こういち)1968年(昭43)4月14日、福岡市博多区生まれの54歳。福岡大大濠-西南大卒。93年入社。写真部などを経て現在報道部。主にJリーグ鳥栖、福岡やアマ野球などを担当。スポーツ歴は野球、陸上中長距離。170センチ、61キロ。血液型A。