第91回全国高校サッカー選手権は今日12日、東京・国立競技場で準決勝2試合が行われる。京都橘と対戦する桐光学園(神奈川)MF佐藤建太主将(3年)は、一昨年秋の右膝前十字靱帯(じんたい)損傷を経て、コラーゲンやビタミンを多く含む豚足をパワー源に貴重なバックアッパーとしてチームを支える。

 華麗な復活を遂げるにふさわしい、大舞台までたどり着いた。準決勝前日の11日、桐光学園の佐藤は開口一番「高校生にとって憧れの、別格の場所。そこで試合をやれることに感謝したい」と国立への思いを口にした。1度は棒に振った選手権。家族に支えられて絶望のふちから再び舞い戻ってきただけに、その言葉には重みがあった。

 昨年度の選手権直前に右膝の前十字靱帯を損傷。2年生ながら夏場にはスタメンをつかんでいただけに、チームにとっても本人にとっても大きな痛手を負った。手術のために入院を余儀なくされ、約1カ月、チームから離れた。「悔しいし、いろんな人に迷惑をかけてしまった」。だが病院の天井ばかり見ていられない。母弥寿子さんの支えもあり、佐藤は早期の復帰を目指した。

 その日から食卓には必ずと言っていいほど「豚足」が並んだ。関節の痛みを和らげる効果があるとされるコラーゲンや、ビタミンが豊富に摂取できるからだ。「(ホテル泊になる)選手権前までずっと欠かさなかった」。一般的には足1本分が1人前。1日1食ずつ口にすれば、1年間で90頭以上からパワーを得たことになる。「けがにいいものを医者に聞いたり、いろいろ調べてくれていた」と、鶏の軟骨を使った料理も頻繁に登場。独自の“食事療法”で英気を養ってきた。

 この日は都内でセットプレーの確認など1時間の調整。佐藤は控え組だったが、大声で仲間を鼓舞し続けた。「途中出場からでも、家族や多くの人へ感謝を伝えられるようなプレーをする」。大恩を胸に国立のピッチに立つ。【湯浅知彦】

 ◆コラーゲン

 細胞と細胞のすきまを埋めている線維状のタンパク質。全身のあらゆる臓器に存在しており、真皮では80%を占める重要な要素となっている。真皮以外では骨、軟骨、歯、血管壁、軟骨などに特に多く存在している。一部の論文では、肌の張りの維持、関節の痛み改善に役立つとされている。

 ◆佐藤建太(さとう・けんた)1994年(平6)7月7日生まれ、神奈川・相模原市出身。小学2年で共和SCで競技を始め、中学時代は湘南ベルマーレ・ジュニアユース。今大会は3試合中2試合に途中出場。家族は両親、兄、姉。177センチ、70キロ。血液型A。