<高校サッカー:鵬翔2-2(4PK3)星稜>◇準決勝◇12日◇国立

 鵬翔(宮崎)が星稜(石川)をPK戦で下し、県勢初の決勝に進んだ。2度リードされる劣勢をはね返して、PK戦では相手が3連続失敗した。ミラクル勝利を演出したGK浅田卓人(3年)は試合前に、OBで元日本代表の鹿島FW興梠慎三(26)から贈られた「お宝スパイク」を履いて験担ぎ。チームは必勝を期し、松崎博美監督(62)の亡き息子の墓参りをしてきた。決勝は14日に国立競技場で行われる。

 鵬翔の執念が、勝利の女神を引き寄せた。PK戦でミラクル劇が起こった。2-3の劣勢で迎えた4人目。GK浅田は相手の蹴る角度や立ち位置などから「突然ひらめいた。相手の3人目が終わって、みんな左に蹴っていた」。キッカーと正対する浅田は自らの右に意識を集中させて、ゴールマウスを守った。左狙いを悟られた星稜選手のプレッシャーにつなげ、まさかの3連続失敗を誘発。PK戦を4-3で制して、宮崎県勢初の決勝進出に貢献した。

 浅田はOBの興梠から大会前にもらってお守りのように大切にしてきたスパイクを試合前練習で初めてはいた。お宝スパイクの感触を確かめながら精神統一し、試合に臨んでいた。験かつぎを過去最高の8強を一気に上回る快挙につなげ「残り1試合。全国制覇できればと思う」と声を弾ませた。チームは5日準々決勝後、いったん宮崎に戻ったが、7日に同校を訪れた興梠に「すげー。このままなら大丈夫。頑張れ」と熱い言葉を投げかけられた。激励も発奮材料だった。

 今大会初の2度のビハインドを追いついた神がかり的な展開も、興梠の期待に応えたかったからだ。1点を追う前半31分、MF小原裕哉(2年)が相手ハンドから得たゴール前のFKを決めて1-1の同点。大会1週間前から本格的に始めたFKだったが、左にカーブしてゴール左隅に突き刺さった弾丸ライナーに会場がどよめく。後半38分には2-1と勝ち越された2分後にFKから同点。ドラマのような激闘で振り出しに戻した。これまでの快進撃を「神がかり」と評してきた松崎監督も「夢みたい。出来過ぎですね」と選手をたたえた。

 勝ちたい理由はほかにもあった。10日の再上京前には、松崎監督が昨年1月に事故のため34歳で亡くした同校OBの息子康博さんの墓に全員で墓参りし「監督を喜ばせるため勝たせてください」と願った。悲しみを乗り越えて指導する監督を胴上げしたかった。2点目を決めたMF東聖二(3年)はお立ち台で「優勝旗を持って帰るので待っててください」と地元にメッセージ。すべての人の魂を胸に刻み、県勢初快挙を成し遂げてみせる。【菊川光一】