「希望」の一発だ。日本代表FW杉本健勇(24=C大阪)が、初先発で初ゴールを決めた。1-0の前半17分、MF倉田秋(28=G大阪)が放ったシュートのこぼれ球に反応。左足で押し込み2点目を奪った。187センチの高さに加え、左右どちらでもシュートを打てる強みを発揮。ハイチと3-3で引き分けた課題満載の試合で、W杯に向けた光明となった。

 ねじ込んだ。「サムライ」に生き残る。その執念で杉本は、倉田が放ったシュートのこぼれ球に詰めた。代表での出場3試合目でようやく訪れた先発チャンス。「結果が欲しい」と背水の覚悟で臨んだ気迫をゴールに結びつけた。「あれを決めるか決めないかは大きい。どんなゴールでもいいと思ってたんで、結果につながってよかった」。初得点は泥臭く決めた。

 187センチの高さを生かしたヘディングの強さに加え、左右どちらでもシュートを打てる。その万能さは、C大阪のユース時代に発揮していた。「最終ラインが弱い」チーム事情からセンターバックに“異動”。当初は抵抗を示したが、見事に役割をこなし08年のJユース準優勝に導いた。センターフォワードとして開花したのも、尹晶煥監督体制の今年からだ。

 ポジションを問わず、能力を発揮する。ただ、その器用さから「きれいなゴール」を求め、あだとなることもある。杉本も自覚し、8月末のW杯アジア最終予選で初招集された際に「自分に足りないのは泥臭さ。そのあたりを岡崎さんらから学びたい」と話していた。学び、吸収した成果をゴールという形で示した。

 満足はない。「あと2点は取れるチャンスがあった。勝ちにつながらないと意味がない。もっともっと自分のレベルを上げていかないと」。日の丸を背負って戦い、さらに「生き残る」気持ちは強まったという。千里の道も一歩から。杉本のロシアへの道も、1得点からつながる。【実藤健一】

 ◆杉本健勇(すぎもと・けんゆう)1992年(平4)11月18日、大阪府生まれ。C大阪の下部組織で育ち、10年7月にプロ契約しトップ昇格。東京V-C大阪-川崎Fをへて昨季からC大阪に復帰。12年ロンドン五輪日本代表。川崎F時代の15年5月に国内組の日本代表候補合宿に参加。今年9月5日のW杯アジア最終予選サウジアラビア戦で国際Aマッチデビュー。187センチ、79キロ。今季は現時点でJ1得点ランク2位の16ゴール。