日本サッカー協会が、今世紀初となるA代表と五輪代表の「合同合宿」を検討していくことが27日、分かった。

 22年W杯カタール大会を目指すA代表の新監督に、東京オリンピック(U-21)代表との兼任で森保一監督(49)が就くことが前日26日に決定。垣根が下がったことで、国際Aマッチデーの活動が重複する問題の解決策として、実現へ本腰を入れる。森保氏はこの日、全権監督の誕生から一夜明けて日本協会に初出勤した。

 森保兼任監督が、らしく謙虚に一夜明けの心情を口にした。A代表監督の肩書が加わってから、初めて日本協会に“登庁”。前日は契約、就任会見と激動だったが「幸せなことだとは思いますけど、喜びの実感はなくて。これから厳しい仕事が待っている。そういう気持ちの方が強いです」とスーツ姿で笑顔を見せた。

 2年後の東京オリンピック、4年後のワールドカップ(W杯)カタール大会に向けて長期的な強化の全権を担う。その全面的サポートを念頭に、日本協会が見送ってきたプランが現実味を帯びてきた。A代表と五輪代表の「合同合宿」-。従来、国内でA代表が活動する裏で五輪代表が海外遠征してきたが、監督が同じなら、そこに2つの代表が集えば自然。協会側の協力を信じ、兼任を受けた森保氏は「具体的には何も決めてないですけど」と強調した上で「選択肢として考えるのはアリだと思います」と可能性を排除しなかった。

 コーチを務めたW杯ロシア大会にはU-19代表が同行。17歳FW久保(東京)らが16強メンバーの練習相手になり、刺激を受けた。「昨日の会見でも言いましたけど、A代表の経験を、若くて経験が浅い選手に伝えてもらいたい」。世代交代、年代間の融合のために「一緒にトレーニングしたり生活をともにし、意識がかなり変わった」姿を目の当たりにした。ミーティングも合同で行えれば戦術のコンセプトも統一できる。

 年内で活動が重複するのは11月の予定だが、Jリーグへの協力要請、年内のコーチングスタッフ不足、代表の格が違うため宿舎等の待遇が異なる、など課題は多い。00年シドニー五輪、02年W杯日韓大会で指揮したトルシエ監督が99年に福島・Jヴィレッジで合同合宿をして以来、実現していないことがハードルの高さを物語る。それでも、今世紀初の兼任監督だからこそ検討に値する。当事者の森保氏が「クラブチームのようにはいかないけれど、代表チームでも可能にしていければ。各代表が関係を築いていければ」と慎重に反応する中、来年に向けて実現の可能性を高めていく。

 とにかく今は、直近の日程重複に目を向ける。8月のジャカルタ・アジア大会と9月のA代表2試合の選考など活動が重なることに「もちろん(遠征中に)映像で見ますが、国内で視察してくれるスタッフに情報提供の量を増やしてもらおうと思っています」。目の前のやるべきことにベストを尽くす、が信条。森保兼任監督は実現できることから始めていく。【木下淳】

 ◆A代表と五輪代表の合同合宿 99年5月9日、トルシエ兼任監督がA代表候補とU-22代表候補の初の合同合宿を福島・Jヴィレッジで開始した。Aは6月開幕の南米選手権、U-22は同月のシドニー五輪アジア1次予選に向けて、メンバー発表では計56人が招集された。11年にはザッケローニ監督のA代表と関塚監督(現技術委員長)のU-22代表が合同合宿を検討したことがあったが、東日本大震災が発生して3月29日の代表活動が中止になるなど実現には至らなかった。