日本代表MF南野拓実(23=ザルツブルク)が、FIFAランク5位の「壁」を切り裂いた。それも2ゴールを挙げて。

まずは前半10分、MF中島翔哉からの鋭い縦パスだった。Aマドリードに所属するDFゴディンを背負いながら、右足ヒールによるトラップで反転。一瞬にして置き去りにすると、ほかのDF陣の寄せも振り切り、右足を一閃(いっせん)した。電光石火の鮮やかな先制ゴールは、9月のコスタリカ戦から国際Aマッチ3試合連続弾。新監督初陣からの3戦連発は93年のJリーグ発足以降、97年の呂比須ワグナー、15年の岡崎慎司に並ぶ最長タイ記録で、国際Aマッチ初得点からの3試合連続ゴールも97年の呂比須以来だった。

「(3戦連発の)その気持ちがないといけないと思っている。自分が点を取って、サバイバルの中で残っていきたい」と話していた中で、まさに有言実行。そして3-2で迎えた後半21分には、今度は嗅覚が働いた。MF堂安律の強烈なミドルシュートをGKがはじいた。そこに1人、詰めていた。足が止まったワールドクラスの守備陣を相手に、森保ジャパンの“新エース”がやってのけた。

3年ぶりに日本代表に復帰した森保ジャパンの初陣コスタリカ戦で代表初ゴールを決めると、12日のパナマ戦でも2試合連続でネットを揺らした。それでも「満足していない」と言い切る。そして、世界5位の強豪との対戦を心待ちにしていた。ゴディンを中心とした強固な守備陣に対してだけでなく「どのポジションの選手もレベルが高い。これまでの試合よりも質の高いプレーが求められる」。もっと、もっと-。その飽くなき向上心が、Aマッチ通算5試合4得点という結果につながっている。

見据える先は1月にUAEで開かれるアジア杯、そして22年W杯カタール大会にある。ウルグアイ戦の前日練習では自分自身の現状について「W杯ロシア大会を戦った選手に比べたら全然ですね。サバイバルの中で勝ち残っていきたい」と覚悟を口にした。主戦場とするトップ下などの攻撃的なポジションには、ロシア大会で背番号10を背負ったMF香川真司らライバルが多い。報道陣から香川について聞かれたとき「真司君のプレーをまねするわけじゃない」と言い切った。自分の特徴を存分に出して勝ち残る-。その意気を、連続ゴールという結果で表した。

19歳でオーストリアのザルツブルクへ活躍の場を移して約3年半。まだまだ伸び盛りの23歳は「まずは思い切ってプレーしようというのが1番。それをしないと自分の良さが消えてしまう」。言葉通り、強豪相手におくすることなく、むしろ手玉に取ったと言っていい試合になった。