感謝の思いとともに、札幌からスタートする。サッカー日本代表の森保一監督(53)が1日、国際親善試合パラグアイ戦(札幌ドーム)の前日会見に出席し、北海道への特別な思いを語った。18年9月6日に北海道胆振東部地震が起き、札幌滞在中のチームも被災。森保ジャパン初陣のチリ戦も中止となった。当時のサポートを「一生忘れることはない」と今でもかみしめる。W杯予選突破後、最初の実戦。北の大地で恩返しの勇姿を見せ、再びW杯へ歩みを進める。

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どれだけ時間がたっても、決して忘れることはない。家族や家の様子、心配は尽きないはずなのに、自分たちをサポートしてくれた北海道の人々。森保監督は静かに思いを紡いだ。

「感謝の思い、一生忘れることはない。北海道の皆さんにいい試合をお見せして元気になってもらい、勇気を与えられる試合をしたい」

18年9月6日。初陣だったはずのチリ戦を前に、北海道胆振東部地震が発生。森保監督を始め、滞在中の日本代表も被災した。周囲の支えがあったから、滞りなく活動が続けられた。

チーム宿舎で代表を担当する高橋博幸フロントオフィスアシスタントマネジャー(48)は、森保監督の言葉を喜ぶ。「本当に勇気づけられる。コロナ禍でそういう姿を見せてくれると、上を向かないといけないという気持ちになれる」。被災した当時、森保監督は「他の皆さんはどうされるのですか? 僕たちを特別扱いしないでください」と他の宿泊客を気遣っていたという。実直で温かな人柄がにじんでいた。

今回の滞在は、昨年6月に日本代表がU-24代表との試合を行って以来。「今回もよろしくお願いします」と頭を下げてくれた森保監督ともに、選手はいつも自らあいさつしてくれる。数年前にはチラホラいた、時間に遅れる選手もいない。「チームの雰囲気がいい。競争心むき出しではなく、みんなでやろう、やらなきゃという雰囲気を感じる」。チームのまとまりを肌で感じている。

予選突破後、最初の試合となるパラグアイ戦。高橋さんをはじめとする、北海道中の人たちに届くように。森保監督は力を込める。「北海道、全国から集まってくれるみなさんにワクワク、エキサイティングな気持ちになってもらう試合をしたい」。強豪のスペイン、ドイツが待ち受ける本大会へ、まずは札幌で、本大会につながるような試合をする。【保坂果那、磯綾乃】

◆北海道胆振東部地震 2018年(平30)9月6日午前3時7分、北海道胆振地方中東部を震源として発生したマグニチュード6・7の地震。震源の深さは37キロ。厚真町で最大震度7を記録。厚真町、安平町、むかわ町を中心に大きな被害をもたらした。震災関連死3人を含む死者44人、重軽傷者785人。苫東厚真火力発電所が完全停止し、道内全域が停電となるブラックアウトも起きた。

○…森保監督は、これまで出場機会が限られた選手たちを試す可能性を示唆した。「いろんな起用というか。基本的には(6日の)ブラジル戦に、これまでの最終予選で戦ってきた軸となる選手を起用しようと思っている」。またシステムはアジア最終予選中に変更した4-3-3をメインとするが「システムを変えられるタイミングがあれば変えていきたいと思っている」。状況を見ながら4-2-3-1なども試す予定だ。